米アカデミー賞で、米俳優ブレンダン・フレイザーが主演男優賞、体重272キロの大学教師を演じたフレイザーに施した特殊メークが、「メイクアップ&ヘアスタイリング賞」でオスカーを獲得し、2冠に輝いた。

主人公は8年前に妻子を捨て、交際に走った同性の教え子を亡くして以降、過食を繰り返し、歩行器なしでは移動もままならない体となった。自宅に引きこもり、生業である大学のオンライン講座での指導中も学生に顔を見せない。亡き教え子の妹でもある親友の看護師に助けられ、生活する中、激しい発作に襲われ、うっ血性心不全で余命いくばくもないと悟り、贖罪(しょくざい)の気持ちで娘と再会し関係修復に動く。

アパートの1室で、ほぼ全ての物語が進行する。そこに集まる主要人物5人が、深い苦悩を抱えつつ誰かを救いたいと考えている。家族だからこそ時にやっかいになる関係性、LGBTQ、ルッキズム…。さまざまなものが絡み合う、重層的な物語に考えさせられる。

15年ぶりに来日したフレイザーは、6日に都内で行われた会見で「共感、思いやり、愛…。困難かも知れないけれど、何とかつかむ希望の物語」と出演作品を評した。共感、感動する人がいれば、受け入れがたいと思う人がいても、おかしくはない賛否両論ある作品だろう。ただ、いずれの形であっても、見れば心の奥深くに、何かが刺さるはずだ。【村上幸将】

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