綾瀬はるかが、16歳から任務に従事し、3年間で57人の殺害に関与した元敏腕スパイ小曾根百合を演じる。アクションに定評がある綾瀬だが、1カ月以上も練習し、撮影中も鍛錬に励み、大半を自ら演じたという殺陣は“映画史上最強のダークヒロイン”のうたい文句にふさわしい。敵対する謎の男・南始を演じる清水尋也と演じた激闘は、芝居を超えた格闘、体術と言っても過言ではないだろう。
それらを構築したのが、1997年(平9)「OPEN HOUSE」での監督デビューから26年で、初めて本格的なアクション映画に挑戦した行定勲監督だ。明確に結論を示さず観客に委ねる、小説的アプローチの作風を象徴する“行定調”とも言うべき、色づかいが美しい画作りは大正時代を舞台に描いた今作では、さらに匂い立つようだ。
1度は戦いから離れながら、羽村仁成演じる細見慎太を守るため、陸軍に向けてS&W M1917リボルバーを撃ちまくりながら「戦いでは何も守れない」と矛盾するセリフを吐く小曾根百合。思いを伝えたいから死んでいられない…不死身にすら思える姿は浮世離れして見える。そんなスクリーンと客席をつなぎ留めるのが、小曾根を支える岩見良明を演じる長谷川博己の抑制が効いた芝居だ。もう1人、印象的なのがカフェの従業員琴子を演じる古川琴音。少女の顔のはざまに強烈な女を見せることにおいて屈指の存在だろう。【村上幸将】
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