どこか釈然としないままだった。6月の選抜総選挙で、衝撃の「結婚宣言」をして、8月30日にグループを卒業した元NMB48の須藤凜々花(20)だ。須藤を応援し、選挙で票を投じたファンが、最後まで、置き去りになっていたように感じたからだ。

 須藤は総選挙後初めて、NMB48劇場に立ったとき、自らの発言で騒がせたことを謝罪した。そして8月6日、神戸でのコンサートで「今こうして、ここに立っていられるのはNMBのみんな、NMBを好きでいてくれるファン、スタッフの方がいたからです」と、メンバーや、グループのファンに感謝した。

 結婚宣言には「私はすごいことをした」「自分で自分のケツも拭けず」などと、自身の発言が招いた騒動に動揺した本音も吐露。総選挙の会場で、須藤を祝福したNMB48メンバーや、須藤以外のメンバーにも一部ファンから非難の声が飛んだことには「本当に申し訳なくて、大事な、大好きなNMBのメンバーを傷つけてしまって、NMBに傷を付けてしまい、本当に大好きで…ごめんなさい」と、おわびを繰り返した。

 正直に心の内にある言葉を発したと思う。ただし、恋愛はご法度という暗黙の空気があるグループに在籍し、ファンの愛をある意味で測るような形になる総選挙の席上で、恋愛を飛び越えて「結婚」を宣言したことは重い。ファンは傷つき、「裏切られた」気持ちになった者も多くいたはず。

 それだけに、なぜ、いきなり「結婚」という言葉を発し、その道を選んだのか、ファンに直接、説明すべきだと思っていた。

 そして、8月30日の卒業公演。アイドルに終止符を打つ日、須藤からその言葉を期待した。だが、結婚発言の真意どころか、結婚にも言及しなかった。

 須藤は「NMBと出会って、別れられて、二重にすてき」「NMBに入って本当によかった」「最後まで一緒にいてくれて、ありがとう。これからは友達になってください」と、ファンにも、メンバーにも、感謝の言葉はたくさん並べた。

 哲学者を志す須藤は、頭の回転が速く、返しのトークも機知に富み、下ネタも平気、選ぶ言葉も個性的なメンバーだった。今年の総選挙前、将来の夢を聞くと「NMBのATMになりたい」と言い、いずれは将来に悩む後輩たちの“後ろ盾”になりたいとの思いを、こう表現していた。

 先を読む力、理解力も表現力もある。度胸もある…いや、度胸はあるが、臆病だったから、ファンを前にした結婚への言及がなかったのかと感じている。人間関係への臆病さだ。

 NMB48へドラフト指名されて加入した後、慣れないダンス、振り覚えに苦しみ、泣いた。「NMBに入って、初めて泣くことを覚えた」と言っていた。他者との距離感の取り方も「下手」と自覚し、比較的、他人との距離感が近い関西の土壌に「助けられた」とも語っていた。

 最後に、その臆病さが出てしまい、傷ついたであろうファンの声に直面できなかったのだろうか。

 すでに、須藤はタレントとして再スタートした。頭も良く、芸人からの意表を突いたつっこみへのハートの強さもある。「タレント」として、そして、1人の「須藤凜々花」という人間の成長、変貌も見守っていきたい。【村上久美子】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)