雪組トップ娘役、朝月希和の退団公演「蒼穹の昴」が兵庫・宝塚大劇場で幕を開けた。浅田次郎氏ベストセラー小説の初舞台化で、清朝末期の中国・紫禁城を舞台にした一本もの。トップ彩風咲奈ふんする改革派の俊英・文秀を慕う娘玲玲にふんする。昨年4月の就任から本拠地3作。彩風を尊敬する思いを役柄に重ね、臨んでいる。宝塚は11月7日まで、東京宝塚劇場で11月26日~12月25日。東京千秋楽をもって退団する。

退団公演への思いを語った雪組トップ娘役朝月希和
退団公演への思いを語った雪組トップ娘役朝月希和

「私が宝塚の舞台に携わるのは最後なんだな」

朝月の胸には稽古中から思いが去来していたという。昨年4月、トップ彩風から相手娘役に迎えられ就任。以来、本拠地は3作目。集合日、開幕…節目ごとに「最後」を感じてきた。

「今までご一緒させていただいた中で、彩風さんのことを尊敬してきましたので、役と重なるところも多い。しっかりと自分で立っていながらも、いい意味で(彩風に)心を委ねられる。その部分が、お芝居を通して見えれば」

今作は清朝末期の紫禁城が舞台。科挙の試験に首席合格して改革派の核になる文秀と、文秀と義兄弟ながら極貧から抜け出そうと宦官(かんがん)になり西太后の側近となる春児を軸に描かれる。春児は人気スター朝美絢がふんし、朝月はその妹役で、文秀を慕う。

「一本もので、ショーがないのは寂しいとの声もいただきましたが、最後の作品で、最初から最後までその役で生きられるのは、とてもありがたいこと」

舞台では少女時代からを演じ「素直ではつらつとして、苦しいことや悲しいことにも、いつもちゃんと顔をあげて自分の意志で歩んでいく。たくましくて力強い女性」ととらえる。

朝月は入団後、花組へ配属され、雪組へ移り、花組へ戻って、再び雪組へ復帰して、娘役としては異例の遅咲き、研12でトップ娘役に就いた。

「玲玲は、どんなことがあっても、めげずに歩いて行く。私が宝塚で歩んできた道のりと多少、リンクする部分はあります。初心を思い出せるのではないか。玲玲を通して、自分自身もしっかり生きていきたい」

兄役の朝美からも「どんなにどん底にいても、希望を捨てない」役作りを学んだ。彩風演じる文秀とは兄、妹のような関係性から、成長して淡い恋心も抱く。王道の「恋仲」ではない。

「あこがれの存在であり、文秀さんに生きる希望の光を与えていただき、尊敬の気持ちもある。言葉にするのが難しい感情を兄に対する家族の愛も含め、繊細に表現していこうと」

中国衣装は初体験。「髪形も(当時の背景を意識し)お団子2つにしてみたり。独特の襟元は、どうすれば美しく見えるのか研究しました」と言う。

「私は(就任後、本拠お披露目の)CITY HUNTERも、(前回本拠地作の)夢介(千両みやげ)も、今回も、王道の娘役の役ではなかったと思うんですけども…。宝塚(の娘役)でこんな役ができるというのを微力ながら(見せられたらと)、役と向き合い、役として作品の中でどう生きるかを考えて心をこめて演じてきました」

キャリアを積んでの就任ゆえ、責任の重さもより感じた。今作は「運命を変えられるか」もテーマだが、退団日が12月25日、クリスマスになったことを「運命の日」と表現した。

「自分を、まわりを信じ、希望を捨てず、目標を決めて走り続ける。希望にかけるエネルギーが、運命を変えるのでは? とも思う。運命の日12月25日に向かって、どう突き詰めていくかを考えていきたい」

クリスマス退団には、朝月自身、驚いた。

「最後に(大階段をおりて)見える景色は、最高のクリスマスプレゼント。人生で最高の、一生忘れられないクリスマスになる。今年の12月25日は大切に、大切に、過ごしたい。雪組ですので、ホワイト・クリスマスになったら(笑い)」

仲間への感謝の思いを胸に最後の公演に臨んでいる朝月希和
仲間への感謝の思いを胸に最後の公演に臨んでいる朝月希和

後任の夢白あやは7年後輩になる。

「お稽古場で、あきらめずに挑戦し、気づくこともある。失敗してもいい。下級生も、怖がらずに恐れず、いろんなことに関心をもって、発見して、挑戦してほしい。そして、娘役の皆さんには、もっともっと娘役を好きになってほしい」

就任1年8カ月を駆け抜ける「娘役の手本」は熱いエールを残し、夢の国を去る。【村上久美子】

◆グランド・ミュージカル「蒼穹の昴」(脚本・演出=原田諒) 19世紀末、清朝末期の紫禁城を舞台にした浅田次郎氏のベストセラー小説を初めて舞台化。

梁家屯の地主の次男・梁文秀(彩風咲奈)は「汝(なんじ)は学問を磨き知を広め、帝を扶翼し奉る重き宿命を負うておる」と、占い師から予言を受けていた。科挙の試験に首席合格。光緒帝(縣千)に仕え、改革派の俊英として名をはせていく。その文秀とかつて義兄弟の契りを交わした極貧の少年、李春児(朝美絢)もまた、占い師から「あまねく財宝を手にするだろう」との予言に夢を託し、妹玲玲(朝月希和)を故郷に残し、宦官(かんがん)となり、西太后の側近へと上りつめる。

☆朝月希和(あさづき・きわ)1月6日、東京都生まれ。10年入団。花組に配属され、歌唱力で注目。13年「愛と革命の詩」で新人公演初ヒロイン。17年8月に雪組、19年11月に古巣花組へ戻る。20年11月に再び雪組へ。雪組トップ彩風が就任した昨年4月12日付で、相手娘役に迎えられた。研12での就任は、近年では渚あきの14年目に次ぐ遅咲きだった。身長163センチ。愛称「ひらめ」「きわ」。