未成年への淫行発覚により、俳優小出恵介(33)主演の土曜ドラマ「神様からひと言~なにわお客様相談室物語~」(全6話)の放送中止を決めたNHKの見解です。主演なので再編集もできず、放送まであと2日というタイミングで連ドラ丸ごとお蔵入り。上田良一会長も「視聴者の期待に添えないことになり残念」とつらい心境をコメントしました。制作関係者、共演者の胸の内を思うと気の毒な限りです。

 会長会見の直前に放送中止が決まるドタバタでしたが、配られた資料は、緊急告知では異例の3枚つづりでした。「神様からひと言」のほかに、プレミアムシネマ「のだめカンタービレ最終楽章」(BSプレミアム)の放送中止や、朝ドラ「梅ちゃん先生」など7番組のオンデンマンド配信休止など、項目ごとの作品リストだけであっという間に3枚。ひとつひとつの作品の重みがずしんときました。

 NHK以外にも、民放、CM、映画などさまざまな映像作品が巻き添えになっており、情報は日々更新されています。

 リストを見て実感するのは、いい作品に恵まれた俳優だということ。03年にデビューして以来、映画「パッチギ!」や、ドラマ「ごくせん第2シリーズ」「ROOKIES」「JIN-仁-」「Nのために」など、出演作は名作がずらり。14年にはNHKで主演時代劇「吉原裏同心」を成功させ、昨年はそのSP版も放送されました。CM「マウントレーニア」(森永乳業)のほっこりする兄貴役も良かったし、Eテレでの「オディプス王」の朗読も好評でした(配信休止)。いい台本を選び、いいキャリアを積ませてきた所属事務所の丁寧な戦略がよく分かるのです。

 個人的には、今年2月に放送されたドラマ「スリル!~赤の章・黒の章~」(全4回)が印象に残っています。NHK総合の「赤の章」(主演小松菜奈)と、BSプレミアムの「黒の章」(主演山本耕史)が連動する意欲作で、小出さんはそれぞれの“相棒”として活躍する刑事役でした。軽いけれど、肝心な時は頼りになる魅力的な役どころ。「TRICK」シリーズで知られる蒔田光治さんの素晴らしい脚本で、シリーズ化してほしいくらい面白かったのですが、この作品も配信休止リストに入ってしまいました。

 「神様からひと言」も楽しみでした。人気作家荻原浩さん原作で、朝ドラ「マッサン」の羽原大介さん脚本。食品メーカーの「お客様相談室」に配属された主人公がクレーム奮闘で成長していく物語です。6日に放送されたPR番組を見ましたが、「いい意味で空気が読めない熱血漢」(本人談)の、笑って泣ける人間ドラマという感じで、いかにも面白そうでした。

 ゆるっと頼もしい上司役の段田安則さんとか、2代目社長の小泉孝太郎さんのボンボンぶりとか、共演の人たちも魅力的。愛着をもって役作りをし、せりふを覚え、現場に臨んでいた様子がメイキング映像から伝わってきました。連ドラ1本書き上げる脚本家の苦労を思うと言葉もありませんし、PR番組にはクレーム考証を担当した専門家も登場していて、いろんな人の仕事が詰まっていたのだと実感します。

 ドラマでは、謝罪の際の禁句である「だけど」「ですから」「でも」の“3D”言葉や、「さようでございますか」「失礼しました」「承知しました」「すみません」「そうだったのですね」という効果的な“S言葉”などのノウハウも出てきました。現実に謝罪コメントを出すに至り、なんとも皮肉な展開です。ドラマファンとしては、やはりドラマで見たかったのですが。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)