4月期の春ドラマが出そろった。警察モノ、事件モノが主要枠だけで8作もある一方、「選挙」「パラ競技」「すしアカデミー」など異色のテーマも目を引く。全体的にオリジナル作品豊富で攻めたラインアップの印象だ。「勝手にドラマ評」第66弾。今回も単なるドラマおたくの立場から勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(主要枠のみ、シリーズものは除く)。
◆「サバ缶、宇宙へ行く」(フジテレビ系、月曜9時)北村匠海/神木隆之介
★★★☆☆
サバ缶で宇宙食開発に挑んだ水産高校生たちの青春。廃校寸前からの逆転劇、14年にわたる夢のリレーなど、大スケールの実話は「プロジェクトX」や「激レアさん」でも話題に。若い推進力にあふれた素材であるだけに、空の色の合成、たこ焼きが地球になるCGなど、添加物多めの演出はなじまない気がする。北村匠海は初の先生役。ちゃんと壁にぶつかり、難しく考えすぎない新米教師の突破力が生き生きとあり、なんだかんだこの先生がいちばん成長していて面白い。夢は動き出したばかりで、1期生たちは3話で卒業。JAXAの宇宙食担当、神木隆之介がまだ合流せずでもったいない。
◆「銀河の一票」(フジテレビ系、月曜10時)黒木華/野呂佳代/松下洸平
★★★★★
告発文の扱いで政界を追われた女性秘書がスナックのママと出会い、都知事選にスカウト。怒濤(どとう)の1日を描いた1話にしぶとい輝きがあり、「エルピス」佐野亜裕美P、「舟を編む」蛭田直美脚本、「ひらやすみ」松本佳奈演出が描き出す女性像がさすがすぎる。泣きながらたまごサンド食べて国家を語り出す猪突(ちょとつ)猛進ヒロインに黒木華は鉄板で、野呂佳代ママの人生も染みた。似合うと思って買ったピンクのスーツのくだりは忘れられない名場面。「政治の話じゃないです。私たちの話です」「立つのは上じゃないです。前です」。せりふの馬力に心躍り、2人がどんな結末にたどり着くのか楽しみ。
◆「リボーン~最後のヒーロー~」(テレビ朝日系、火曜9時)高橋一生/中村アン
★★★☆☆
冷徹経営のIT社長→誰かに突き落とされて死ぬ→貧乏商店街のクリーニング屋さんに転生→そこは2012年の世界だった→未来の知識を使って商店街再生へ。転生ブーム、平成ブーム、考察モノなどトレンド全部乗せ。商店街編に入った2話から、未来を知っているアドバンテージと、住民たちの職人技が奇跡を生むフォーマットが動き出したと思ったら、3話から「過去を変えたせいで未来が危機」というタイムパラドックスも乗っかってきた。初対面の女性に張り倒されがちな高橋一生、よろけっぷりが神な高橋一生のコメディー力についていけばサクッと楽しい。
◆「夫婦別姓刑事」(フジテレビ系、火曜9時)佐藤二朗/橋本愛
★★★☆☆
「夫婦関係を隠して沼袋署に勤務する四方田と鈴木」のお話で、選択的夫婦別姓という政治的テーマを思わせるタイトルで損をしている感。妻を殺され執念の捜査を続ける刑事と、そんな先輩を好きになって後妻となった相棒。犯人を見つけるまで異動させられるわけにはいかない2人の隠密生活がコメディーにもシリアスにもなり、それぞれのキャラクター、シゴデキぶりは魅力的。泣きながらアメリカンドッグを食べる佐藤二朗の激情と、一番おいしいところをあげちゃう橋本愛のこざっぱりとした優しさにほろっときた。軸足はコメディーだが、思ったよりミステリー度高め。
◆「時すでにおスシ!?」(TBS系、火曜10時)永作博美/松山ケンイチ
★★★☆☆
50歳パート主婦が、すしアカデミーで第2の人生探し。息子が独り立ちし、突然“お母さん業”を失った喪失感を永作博美がいい泣き笑いで演じる。飲み込んでいた胸の内が決壊した夕暮れのシーンは、中高年クライシスの当事者世代には刺さるはず。永作と、講師の松山ケンイチの交流がメインゆえ、バリキャリ女子、学生、老紳士など多彩な生徒さんの人生はいったん置いたまま前半戦が過ぎる。もっと異文化交流の刺激と成長を見たい。ラブコメ枠でシニアドラマの挑戦は買いたいが、飛び道具なキャスティング多めで脱線しがちなので、もう少しテンポよく期待。
◆「月夜行路-答えは名作の中に-」(日本テレビ系、水曜10時)波瑠/麻生久美子
★★★★☆
文学おたくの銀座のママが、豊富な知識で殺人事件の謎を解く。「曽根崎心中」「黒蜥蜴」など名作文学とリンクする事件が、ちょうどいいB級感、火サス感で展開。挿絵風のアニメでサクッとあらすじを解説してくれて、文学の敷居を思い切り下げてくれる工夫もありがたい。「黒蜥蜴には別バージョンがある」など文学トリビアが余韻あるどんでん返しになっていたり、夏目漱石も用いていた読書法が初恋の人の人生を生き生きと教えてくれたりする読後感もいい。何か心に残るわけではないけれど、見ている60分はちゃんと楽しい。エンタメはそれがいちばん。
◆「LOVED ONE」(フジテレビ系、水曜10時)ディーン・フジオカ/瀧内公美
★★★★☆
法医学ドラマに、メディカルイグザミナー(捜査権を持つ法医学者)という新種の切り口。「水深40センチの溺死」「空から落ちた遺体」など客寄せ感のあるテーマを入り口に、親子の愛、友情など手堅い感動に着地する作り。外国帰りの天才、謎解き発動タイム&キメぜりふなどのテンプレも、ディーンがやると不思議なオーダーメード感が出て、これはこれで新鮮という不思議。女性キャラがパッとしない外様や謎イキリで心がへし折れたが、急に友情が芽生えたあたりで人間味が出てきた。1話の涙の演技が素晴らしかった中山敬悟は今期の新人賞。
◆「今夜、秘密のキッチンで」(フジテレビ系、木曜10時)木南晴夏/高杉真宙
★★☆☆☆
夫のモラハラで地獄の結婚生活を送る元トップ女優と、キッチンに現れるイタリアンシェフの幽霊のラブストーリー。原作マンガは「モラハラ」「セックスレス」「モンスター義母」という地獄が明確で応援できるテイストだが、あれこれ事情を盛ったドラマ版はめそめそした自己憐憫(れんびん)ワールド。「努力してきたんだね」「君の価値はちゃんとあるよ」「あゆみちゃんはあゆみちゃんのままでいいんだよ」。無個性な励ましはさておき、元気出そうなひと皿は美しい。あの世系ファンタジー大国の韓国ドラマなら、けっこうな佳編にしそうなテーマかも。
◆「田鎖ブラザーズ」(TBS系、金曜10時)岡田将生/染谷将太
★★★★★
子どもの頃に両親を殺され、犯人を捜すため警察官になった兄弟のクライムサスペンス。熱いハートを不真面目に隠している兄(岡田将生)と、感情の一部にフタをしている優しい弟(染谷将太)。夢のキャスティングがすごい仕上がり。時効が成立して16年。生傷を抱えたまま、つかず離れず必要な時に横にいる兄弟の絆に色気があり、この2人らしいコンビネーション、たどり着く真実にほろ苦い見ごたえがある。毎回の事件と、縦軸となる自分たちの事件が極上のミステリーになっていて、これをオリジナルで見れる幸せ。どこかで希望を捨てていない2人に希望が持てて、止まった時間がどう動き出すのか期待。
◆「タツキ先生は甘すぎる!」(日本テレビ系、土曜9時)町田啓太/松本穂香
★★★☆☆
不登校の子どもたちの居場所、フリースクールのヒューマンドラマ。「やりたいことだけやればいいんだよ」という問題提起に賛否両論あるのはいいこと。親が喜ぶいい子の限界、万能キャラの生きづらさ、親の不仲が与える影響など毎回のテーマはいろいろだが、原因は親にあり、親が学ぶという流れは同じ。古い価値観で息子を縛ったタツキ先生の過去も明かされ始め、パステル調の作風とは裏腹に重い話になってきた。絵で子どもの心を知るアートセラピー。子どもたちの絵が画家並みにうまい。デリケートな題材ゆえ、エンタメとして飛躍した挑戦がしにくそう。
◆「GIFT」(TBS系、日曜9時)堤真一/山田裕貴/有村架純
★★★☆☆
天才宇宙物理学者が、車いすラグビーの弱小チームを再生。競技のスピード感、激しいクラッシュや衝撃音は映像作品向きで、表現する山田裕貴ら選手たちの車いすさばきは圧巻。ヒールな王者に弱小が挑む日曜劇場のカタルシスをしっかり踏み、漫画の主人公みたいな強キャラがあちこちに。異業種による負け組改革は王道テーマだが、宇宙物理学は微妙。「あなたは光を失った星です」「宇宙のように最高」というかみくだきワールドで理系が薄め。「やまとなでしこ」「容疑者Xの献身」に続いて数学キャラの堤真一。いずれもお人よし系の学者だったので、ドライな色気で見てみたかった。
◆「エラー」(テレビ朝日系、日曜10時15分)畑芽育/志田未来
★★★★☆
誤って女性を転落死させてしまったユメ(畑芽育)と、その女性の一人娘である未央(志田未来)が偶然出会い、何も知らずに友情が始まる。過失なのに通報できなかったユメ側の事情作りがうまく、主演女優2人が気持ちの動線をぐいぐい見せてくれる。脚本はNHK「3000万円」の弥重早希子氏。「不倫男の勇み足」「うっかり目撃者登場」「すごいタイミングで間違える弟」など、小さな「エラー」でどんどんドロ沼という愚かさが今回も人ごとではなく迫ってくる。未央と同居することになるJKが絶妙に相関図をかき回し、ギョーザパーティーの地獄絵図に震えた。
◆「10回切って倒れない木はない」(日本テレビ系、日曜10時半)志尊淳/仁村紗和
★★☆☆☆
韓国のホテル財閥の養子として育つも、東京の支店に飛ばされた日本人青年が、運命の女性と再会するラブストーリー。志尊淳が韓国語で奮闘し、韓国キャストも手堅く豪華だが、字幕シーンが多いとお客さんの集中が途切れそう。財閥、血縁バトル、出生の秘密など、韓国流マクチャンドラマをやりたがる邦ドラのムーブメント。記憶喪失、病気発覚、実は血がつながっていた、みたいな次の定番展開があったら面白いかも。2話からヒロインのこども食堂の話になり、ホテルがサイドストーリーに。敵か味方か分からない御曹司、京本大我のチャラエモい立ち回りが個人的にツボ。
【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

















