高校に侵入して制服などを盗んだとして、窃盗と建造物侵入の罪に問われた元お笑いコンビ「キングオブコメディ」の高橋健一被告(45)の第5回公判が2日、東京地裁で開かれ、被告人質問で自ら犯行の背景などを語った。また、検察側は「犯行は悪質で大胆。常習性は顕著。再犯の可能性も高い」として懲役3年を求刑。弁護側は「計画性はない。母の自殺など情状として一定の考慮がなされるべき。被害者25人中、16人は示談となった。実刑は相当ではない」と主張した。

 高橋被告の被告人質問で素直に起訴事実を認め、犯行に及んだ背景を約1時間にわたって説明した。「中学に上がってすぐ、いじめにあい、小学時代は普通に話していた女子にからかわれ、笑われた印象が強い。(その女子たちの)制服のイメージが強く、制服へのコンプレックス、劣等感を持っていた」。さらに「女性という人間に対し、劣等感、怖いものもあるので物である制服に欲求が向かったのではないかと思う」と説明した。

 犯行のきっかけは97年2月の母の自殺。「きっかけはあったと思います。母が亡くなったことです。平成6年に自殺未遂、平成9年に亡くなりました。もう1度やりました。脳と脊髄が冒される難病でした。いなくなった喪失感と亡くなろうとした決意を伝えてもらえなかった。何の助けにもならず、後悔が大きいです。それだけではなく、父は母に目を向けなかった。母は2回とも遺書に『父と同じ墓にだけは入れないで』と書いていました」とした。

 その父が営む会社の経営が傾き2600万円の借金をたてかえたことも明らかに。父については「大金がギャンブルにも消えました。知らない女性からも電話がかかってきたりした」とし、「ふり返るとそういうものから現実逃避していたと思う」と述べた。

 また、自身の仕事においても「キングオブコメディ」の相方に対し、「パートナーの足を引っ張っている感じでした。収入は折半で、恵んでもらっているような申し訳ない気持ちになりました」と語った。

 この日は情状証人として高橋の妹と高校時代の友人も証言台に立った。妹が父の金の問題などで兄は苦労していたと話すと、高橋は涙を流した。

 判決は9日に言い渡される。