女優の加弥乃(22)が、公開中の映画「傷だらけの悪魔」(山岸聖太監督)で抜群の存在感を見せている。いじめをテーマにしたスマートフォン向けコミックスの実写化作品で、主人公を徹底的にいじめ抜く女子高生を演じた。加弥乃が日刊スポーツの単独インタビューに応じ、泣くほど精神的に追い込まれたいじめの演技と、いじめへの思いを語った。【村上幸将】

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 加弥乃が演じる優里亜は、栃木の高校でクラスを仕切る“女王様キャラ”。主演の足立梨花(24)が演じる、東京からやってきた転校生・舞が、危険なアウトサイダーだと判断すると、教科書を割いたり監禁したりなど、壮絶ないじめを仕掛ける役どころだ。

 -見ていて胸がムカムカするほど嫌ないじめっ子。どういう気持ちで演じた?

 加弥乃 誰かがやらなきゃいけない、いじめる側の役を任されたことは役者としてはうれしかったし、楽しみでもあったんですけど、考え、いろいろな人に話を聞き、原作を読む中で、どんどん嫌な気持ちになっていった。日々、暗い気持ちで役作りが始まり、撮影に臨んだら、実際に生身の人間に(いじめを)していくわけで…カットのたびに、モヤッとする気持ちがありましたね。演じる直前に、ちょっと気合を入れないと心が折れちゃいそうで。

 -どういう人に取材した

 加弥乃 現役の高校生に話を聞きました。いじめられる側の気持ちとか、傍観者まではいかなくても、いじめを知っている人に話を聞きました。今のいじめには、やっぱりネットが出てくるんだと思いました。

 -いじめっ子役の経験は

 加弥乃 2度あります。09年のドラマ「怨み屋本舗 REBOOT」(テレビ東京系)で演じた時は、ちゃんと復讐(ふくしゅう)されました。同年の「小公女セイラ」(TBS系)では、いじめっ子について回る傍観者。設定が特になかったので、いじめが嫌なのに言い出せない女の子の役作りをしました。リーダー格の役は初めてでした。

 -主演の足立梨花との“いじめバトル”を演じて

 加弥乃 やっていて、本当にバチバチで…お芝居は面白かったですけど(演技とはいえ、いじめるので)思うところがありました。皆さんのいないところで1回、泣きました。怖くなって…。こういうテーマだと、純粋に楽しいだけでは、やっていけないですよね。

 -足立は高校の先輩

 加弥乃 1つ上の先輩なんですよ。学校では、ほとんど面識はなかったんですけど、舘ひろしさん主演の「隠密八百八町」(11年のNHK土曜時代劇)で1度、共演させていただきました。その時は足立さんがレギュラーで、私は1話限りのゲストで、すぐ殺される役だったんですが、死ぬまでは足立さんが演じる役と仲のいい役どころでした。ほぼ初対面だったんですけど、めちゃめちゃ笑顔で接してくださって、撮影後に2ショットまで撮ってくださった。ご飯も一緒に行ったことがあって、優しく接してくださった。今回は久しぶりの共演でした。ちなみに、詩乃役の江野沢愛美ちゃんは1つ後輩です。

 -実際の先輩・足立が演じる主人公を徹底的にいじめ、体育用具室で失禁させてしまうシーンも。「やりすぎ」と言われなかった?

 加弥乃 最初のリハーサルの時、足立さんに「お疲れさまです」と言いに行ったら「遠慮しないで、どんどん来ていいからね」と笑顔で明るくおっしゃって…そこから本番は(役作りで)口を利いてくれませんでした。足立さんはキャスト全員とそんな感じでした。

 -優里亜は舞に逆襲されて、クラスの女王から転落して孤独になった。何を思って演じていたか

 加弥乃 (優里亜は)寂しいけれど、何で? と思っていたでしょうし、演じていてもそう思いました。自分としては、優里亜を止めてくれてありがとう、と思いました。きっかけがないと、もっとひどいことをして誰かを自殺とか取り返しのつかないところに追い込んでいた気がします。

 ◆いじめは、やるものじゃない…

 -この作品に出演し、あらためて、いじめについてどう思うか?

 加弥乃 やるものじゃないです。因果応報ってあると思う。今回の作品では、東京で詩乃のいじめを傍観していた舞が、引っ越した先の栃木で詩乃に復讐(ふくしゅう)されるし、舞をいじめた優里亜の周りからは人が離れていった。やったことは自分にいつか跳ね返ってくるはずだし。

 -舞が友人のアカウントを使って優里亜とやりとりをする“なりすまし”で、いじめの逆襲をする場面がある。学生時代にネットを使ったいじめはあったか

 加弥乃 掲示板などを使っての、いじめはありましたが、今、はやりのLINEは高校3年の卒業時に入ったくらいで…。

 -同級生がLINEで優里亜のバッシングを始め、一気に離れていくシーンに現代のいじめの怖さをみた

 加弥乃 舞がLINEアカウントのなりすましで、偽りが全くなかった優里亜と静の関係を壊してしまう。そこが怖いですよね。本人が言っていないことが、事実としてねじ曲げて友だちに伝わることで、信じられてしまう。

 -出演して考えさせられることは多かった?

 メチャメチャ多かったです。いじめに対してもそうですし、テーマは本当に重いです。

 -中高生に見てほしいところは?

 加弥乃 こちらが伝えたいことも、もちろんあるけれど…見た方がそれぞれ、受け取り方は違うし、思うところはあると思う。見た翌日から皆さん、学校に行くじゃないですか? その(いじめが起きた)時に、どう、自分が動くか考えてくれると思う。人の嫌がることをやる意味なんて、何もないじゃないですか? 見た方の、いろいろな意見を聞いてみたいですね。

 次回は、昨年以降、人気と実力を兼ね備えた監督の作品への出演が相次いぐ、加弥乃の女優業に迫る。

 ◆加弥乃(かやの)1994年(平6)2月10日、東京都生まれ。子役として「アニー」などの舞台に出演。キューピーのCM「たらこ・たらこ」の歌とナレーションを担当。07年のテレビ東京系ドラマ「チョコミミ」で連続ドラマデビュー。特技はバック転などのアクションと殺陣、アルトサックス、ダンス。161センチ、血液型A。