「リング」シリーズ、「仄暗い水の底から」などで知られるホラー映画界を代表する監督の1人、中田秀夫監督から「僕はホラーは好きじゃないんです。ホラーは生業(なりわい)です」という意外な告白を聞いた。

 中田監督の新作で、舘ひろし、黒木瞳のダブル主演映画「終わった人」について取材をしていた時のことだ。もともと、男女のメロドラマが大好きで日活撮影所に入ったというだけあって、ロマンチックコメディー「終わった人」への意気込みは相当なものだった。初めて自分で製作会社に企画を持ち込むという行動に出た。「本当はこういう作品を作りたかったんです」。

 中田監督は、「エルム街の悪夢」「スクリーム」シリーズを手掛け、15年に死去したウェス・クレイブン監督と雑誌で対談した時、「ホラー映画を2本以上作ってヘタに当たったら、ずっとホラーを作ることなる。気をつけろ」と、言われたことを明かした。

 クレイブン監督がホラーのヒット作を連発した後に、音楽教師と子供たちの交流を描いた「ミュージック・オブ・ハート」というハートフルな物語を作ったことを引き合いに、中田監督は「本当は違うことをいっぱいやりたかったんだろうなと思いました。僕もウェスさんの後を追っているような…」と笑った。

 恐怖と笑いは表裏一体、紙一重でもある。ホラーの中田監督が作るロマンチックコメディーが楽しみ、という話になったら、中田監督は、やっぱりそうきたかという顔をして「僕が何を作っても、ホラーの要素がある、夫婦関係もホラーですよね、とか言われちゃう。ホラーは好きじゃないんですって」と言い、取材陣を笑わせた。新作が一層楽しみになった。