俳優石倉三郎(72)が出演するショートムービー「気づかなくてごめんね」(犬童一利監督)完成発表会を取材した。

同作はヒアリングハラスメント・ゼロ推進委員会による啓発ムービーだ。聴力低下が認知症と誤認されるケースが多いことから、医療機関・介護施設などでの“聞こえ”への理解を訴える内容となっている。

石倉は同作で耳が遠くなったことで、自分の殻に閉じこもり、家族から認知症と誤認される役を演じている。

実はこの“誤認”、実際に医療や介護現場で多く起きてるという。中でも「感音性難聴」は、大きな音のほうが聞き取りづらいようだ。耳が遠いと思うと、話し手は大声になったり、耳元で話したりしがちだが、逆効果の場合もあるということだ。

また、聞き手は相手の言うことを聞き取れないから反応できない。これが“認知症”と勘違いされる。さらに、耳が遠い人は自分から「聞こえない」「聞こえにくい」ことは話さない傾向があるという。つまり、話す側の配慮が必要ということだ。

取材するまで、この事実を知らなかった。「気づかなくてごめん」ならぬ「知らなくてごめん」だ。50歳になり老眼は数年前から始まっているが、幸い耳はまだ大丈夫。とはいえ、「明日はわが身」だ。「感音性難聴」を知れただけでも有意義な取材だった。

もちろん石倉は演技だが、「実際に聞こえなかったらと思うと、やっていて恐ろしかった」と振り返っていた。【川田和博】