山田洋次監督(88)がシリーズ50作目の新作「男はつらいよ お帰り 寅さん」(12月27日公開)について、日本外国特派員協会での会見を行った。海外メディアの質問が活発に飛び、活況な会見だった。

質問は多種多彩で、シンガポールの記者は「マドンナを選ぶ基準は? 私の好きな山口百恵さんはなぜ出演していないの?」。

山田監督は「彼(=寅次郎)が恋するのはどんな女優がいいかを考え、たくさんの女優の中から選ぶのですが、寅はどんな人にでも恋できる。その(マドンナを選ぶ)仕事は僕にとって楽しいものでした。百恵さんももちろん考えましたが、すでに映画に出ることをやめていたのでだめでした」と、丁寧に回答した。

ロシアの記者は、山田監督の88歳という年齢と次回作について質問。山田監督が「年のことを考えると怖くてね。映画どころじゃねえや、と思うんだけど」と、ぽろっと本音? を漏らしたのが印象に残った。

それでも「アメリカではクリント・イーストウッド監督がいて頑張っているので、僕も一緒に頑張ろうと思う」と1歳上の監督を挙げた。さらに「ポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラ監督、日本の新藤兼人監督は100歳を超えても撮っていました。まだまだ希望を持っていいと思う」と言うと、記者たちから拍手が起きた。

日本に駐在している海外メディアの記者だけでなく、フランスから山田監督の新作を見るためにやって来たという記者もいた。滞在はたった2日だという記者は、「男はつらいよ」シリーズで、駅での別れのシーンが多いのはなぜか、と質問した。

山田監督が、寅次郎という人が、列車、電車に乗って、友達をつくるのが好きだったとし、「寅は新幹線は好きじゃないんです。早く着くことなんて全然楽しいことじゃない。早く着いてしまうのに、なぜ高い料金を払わなければならないのかと思っている」などとユーモアを交えて語った。

温かい雰囲気で、山田監督にとっても楽しい会見だったと思う。最後に山田監督が満面の笑みを見せてくれたことからも分かった。