先月28日、NHKBS1で「渡辺謙と東日本大震災~見つめ続けた10年~」が放送された。多くの日本人が震災の被災者に思いを巡らせてきたとは思うが、被災地に何度も赴き、被災者と寄り添う渡辺の姿をあらためて画面越しに見ると、頭が下がる思いだ。
そんな風に思ったのは、渡辺のインタビューをした際の、彼の言葉からだった。
渡辺は13年、津波で甚大な被害を受けた気仙沼市に、カフェK-port(ケイポート)を開店した。住民から人が集まる場所がなくなったと聞いたことがきっかけだった。
経営者として、被災地に向き合ってきたが、役者の仕事もあるため、常に店にいることはできない。それを埋めようと、ほぼ毎日、自筆のメッセージを書き、ファクスで店に送っている。
このことだけでも、よくやっていると感服する。だが、渡辺はそれすらも否定する。「思い入れとかじゃないんです。たんなる愚痴とかぼやきとかね。ただ、書いている5分から10分間は必ずそこのことを考えているという時間なんです」と言うのだ。
5分でも10分でも、手書きで文章を書いている時間は、気仙沼のことを考えているという。この5分、10分という時間が、脚本も演出もないリアルさだと思う。少しずつでもいいから、ずっと、被災地に寄り添うことの大事さ、大切さを語っている。
復興というと、どうしてもハコモノ行政にスポットが当たる。がれきが処理され、新しい道路ができ、防潮堤も整備され、高台に住宅地ができ、大きな商業施設ができる。それはそれで大切だけど、それでおしまいではない。私たちは、少しずつでもいいから、被災地に寄り添い、被災地のことを思うことも大切なのだと、渡辺のインタビューから感じた。
懐に余裕がある人は寄付をするのもよし。それができなくても、被災地の産品を購入したりすることはできる。個人的には、緊急事態宣言が明けたら、宮城や福島の日本酒を飲もうと思っている。【竹村章】



