俳優三夏紳（みなつ・しん＝80）と映像監督松生秀二（まつおい・ひでじ＝80）の61年に及ぶ長き友情の結晶、劇団三松座の公演「告白」が20～22日、東京・武蔵野公会堂で上演される。

このほど取材に応じた三夏は「大学入学で初めて会った。こんなに長いつき合いになるとは」。松生監督は「80歳になっても一緒に仕事ができるなんて、幸せだね」と意気込みを語った。座長を務める三夏が33年前、未経験だった舞台上演を松生監督に持ちかけ、27回目の公演になる。

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三松座の劇団名は三夏と松生監督の名前から。

松生監督は「昭和35年、1960年に、2人とも日大芸術学部の演劇学科に入学して始めて出会った。もう61年にもなるんだね」と振り返った。

三夏は2年生になった61年に大映のニューフェースの15期生として入社。「2期上に江波杏子さん。1期下が倉石功。3年後に平泉成が入ってきた。それから関根恵子だとか、松坂慶子だとかに続いて行く」と話した。

演劇学科に入った2人だが、演劇にひかれることはなかった。松生監督は「演劇学科に入ったけど演劇青年じゃなかった。『劇映画制作研究会』というのに入って、演劇学科のくせに映画学科の授業にも顔を出していた。転科はしてないんだけどね」。

大映に入った三夏には、大きな出会いがあった。97年に亡くなった映画史に残るスター、勝新こと勝新太郎さん。師匠と慕うようになる。

「勝新さん、（市川）雷蔵さんの時代が来ていました。ニューフェースで入って、養成所を卒業して最初に俳優課から夜に電話があって『明日の朝9時に撮影所に来てくれ』と。さっそくいい役をもらえるんだと飛んで行って『学生時代に勝さんに似てると言われたんで、調子に乗ってニューフェースを受けました』って言って。そうしたら、大映のスターがラストシーンで全員そろうオールスターキャストの『仲良し音頭　日本一だよ』っていう映画の話だった。『実はな、勝新太郎が新しい主演映画のポスター撮りで明日、来られないんだ。それで悪いけど、勝さんのロングショットは全部やってくれ』と。影武者みたいな話でしたが、喜んでやらせてもらいますと。それが『座頭市物語』でした。当時はリーゼントにしていたんだけど『髪の毛、切れるかな』言われて、とツルツルの頭にしました」

撮影の次の日に勝新太郎が京都からやってきた。

「『三夏を呼んでくれ、お礼を言いたい』ということで対面させていただきました。それがご縁で、勝さんを師匠と呼ぶようになりました。ズーッと、亡くなるまで、本当に縁があってね」。【小谷野俊哉】（続く）

◆三夏紳（みなつ・しん）1941年（昭16）6月13日、広島市生まれ。日大芸術学部在学中の61年に大映ニューフェース15期精。62年映画「雪の降る町に」で俳優デビュー。64年映画「獣の戯れ」。66年映画「陸軍中野学校」。66～71年、TBS「ザ・ガードマン」。72～75年、NET（現テレビ朝日）「特別機動捜査隊」。83年映画「丑三つの村」など。

◆松生秀二（まつおい・ひでじ）1941年（昭16）5月7日、北海道生まれ。63年に日大芸術学部を中退して、大映のテレビ部の演出家に。70年にTBS「あなたはいない」で監督デビュー。フリー監督として大映テレビ、人間プロ、近代映画などで監督活動。71年TBS「メダカの歌」。86年フジテレビ「愛の嵐」。96年フジテレビ「はるちゃん」。06年映画「奇跡の海」。07年「絆」など。

▼劇団三松座公演「告白」　8月20～22日、東京・武蔵野公会堂。脚本は三山紳一、山田哲也、演出は松生秀二。出演は三夏紳、高橋政子、穐吉次代、山田哲也、川島一平、星野光代、市瀬瑠夏、丸山果里菜、叶純子、上原和ら。