コメディアン、ぜんじろう(53)が20日に東京・下北沢の小劇場・楽園で開催される公演「スタンダップコメディGO! Vol.2」(午後6時30分開演)に出演する。他に清水宏(55)、ラサール石井(66)、インコさん(45)が出演する。

90年代前半に「平成の明石家さんま」としてブレークした、ぜんじろう。スタンダップコメディーの旗手となるまでの歩みを聞いた。

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90年代に関西で毎日放送「テレビのツボ」の司会を務めて大ブレーク。東京に進出したが、壁にぶち当たった。98年に渡米して、本場のスタンダップコメディーに触れた。

「あちらでは大きなホールでやるんですよ。マディソンスクエアガーデンとかで。見せるんじゃなく聞かすんですよ。で、日本に戻ってきて、できるだけ根付かしたいなと思ってやっています」

落語、漫談などのピンのしゃべり芸がある日本。スタンダップコメディーへの反発もあった。

「民主主義の始まりは、人の話は取りあえず黙って聞く、受け入れるってのがある。でも、日本じゃ先輩とか忖度(そんたく)があって『それちゃうやろ、お前っ』て言われたら、何も言えないすもん(笑い)。反対意見でもちゃんと聞いて、ロジック(論理)が通っていたら、笑うというのが、スタンダップのイメージって言うところなんです」

権力者をけなして、笑い飛ばす。スタンダップコメディーの日本での一般的なイメージだ。

「スタンダップって反体制みたいに思われるんですけど、政治ネタは反体制じゃなくて、与党にも野党にも、全方向に向けて言ってるんです。スタンダップでやってはいけないことはただ1つだけ。差別が駄目。なので、野党の事、言いたいんですけど、弱すぎるんですよ、日本。弱い者いじめになっちゃう。弱いわ~、弱い。もうちょい、頑張ってくれよ(笑い)。今、与党が強すぎる。維新が、今回の選挙で勝ってくれたから、ものすごく維新のことは言ってるんですけど、そこもまだ理解されていない。スタンダップっていうと反権力です、でもないんですよ。弱い者いじめが駄目なだけで。まぁ、強いもんに言ってくんですけど」

れいわ新選組の山本太郎代表が、麻生太郎元総理に「万死に値する人間である」と毒づいて炎上した。

「僕はネタで『あれは言い過ぎや』と。万死の意味しらなくて、調べてみたら何回も死んでぐらいの罪を犯していると。だから、それは言い過ぎやと。『死ぬのは1回でええよ』っていうオチなんですけどね(笑い)。政治家も人間だからとか言うけど、麻生さんとか(前総理の)菅(義偉)さんは権力。スタンダップは社会構造のネタで、権力に対しては何を言ってもいい。スタンダップコメディーは大人の笑い。大人と子供の違いは何か。主義をしっかり、社会的建前もしっかり押さえた上で本音を言っていく。おもろければいいというものじゃない」。【小谷野俊哉】(続く)

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◆ぜんじろう 1968年(昭43)1月30日、兵庫県姫路市生まれ。大阪芸大芸術学部デザイン学科中退。87年、上岡龍太郎に入門、吉本興業に所属。88年月亭かなめとの漫才コンビ、かなめ・ぜんじろう結成。同年、今宮子供えびすマンザイ新人コンクールで福笑い大賞。89年(平元)、ABCお笑いグランプリで最優秀新人賞、上方漫才大賞新人奨励賞も、解散してピン芸人に。92年、毎日放送「テレビのツボ」司会でブレーク。95年「超天才・たけしの元気が出るテレビ!!」。98年渡米。01年帰国。170センチ、57キロ。