恒例の漫才日本一決定戦「M-1グランプリ2021」は、12月19日にテレビ朝日系(制作・ABCテレビ)で生放送される。年々、吉本興業所属以外のコンビが勢力を拡大。今年は「非吉本」が決勝進出9組のうち、4組を占める。さらには、漫才の本場からの「大阪吉本」勢は、もも、ロングコートダディの2組だけ。決勝初進出のロングコートダディに意気込みを聞いた。(取材・三宅敏)

M1決勝に臨むロングコートダディの堂前透(左)と兎(撮影・三宅敏)
M1決勝に臨むロングコートダディの堂前透(左)と兎(撮影・三宅敏)

新型コロナウイルスを乗り越えてのM-1決勝参戦だ。準々決勝を間近に控えて、まさかのダブル感染。ロングコートダディの堂前透(31)と兎(うさぎ=33)は療養生活を強いられている間に、本来挑む予定だった大阪での準々決勝(11月10日)が終了。しかし、失意の底から急回復し、東京の準々決勝(同16日)にはなんとか間に合った。

「一時はどうなることかと思いましたが、ほんとにぎりぎりセーフでした」

2人で顔を見合わせる。

M-1は一昨年、昨年と2年連続で準決勝敗退。その前の3年間も準々決勝敗退だった。着実に前進している。しかし、彼らの奥深いところは「もちろん、漫才には全力で取り組んでいます。だけど、僕らの本職はコントなんです」。

ネタを書くのは主に堂前。どこかひょうひょうとした彼ならではのシュールで、それでいて優しい空気感に包まれた設定とセリフの応酬。兎は、豊かな表現力と存在感で舞台上に体現する。好対照のコンビは例えるならば「静と動」であり「光と影」。

M-1と並ぶ、もう一方の大目標「キング・オブ・コント」では、昨年決勝に初進出し、今年も準決勝まで奮闘した。

「ここまで堂前に連れてきてもらったという思いがある。俺1人では決して来ることができない。最高の相方ですよ」と、初のM-1決勝を前に心情を明かす兎。舞台で大きな体を駆使しパワーを全開させる兎に対し、どこかクールに映る堂前は「ようやく兎の良さを生かせるネタを書けるようになってきたかな。何よりも舞台をメインで、今後もずっと食べていきたい思いが強いです」と職人かたぎな一面をうかがわせる。

▼▼後編にM1全大会の「吉本VS非吉本構成比」▼▼

吉本?非吉本?M-1グランプリ歴代決勝組所属
吉本?非吉本?M-1グランプリ歴代決勝組所属

ロングコートダディは「漫才が本職でない」ことが、かえって強みでもある。

キング・オブ・コントでは「どうしても力が入りすぎてしまう」と反省もある。だが、M-1の道のりでは「いい意味で肩の力が抜けた」(兎)という。

「いまの僕らに絶対優勝するぞ、なんて欲はないですから。素晴らしい大会に参加させてもらっているという思い」と堂前もソフトな表情を浮かべて言う。

「正直に言えば、コント中心でやってきた僕らの漫才はまだ技術不足。だけど、漫才を決して軽く見てはいない。一昨年の準決勝では緊張で力が出せず、悔しくて涙が止まらなかった」と兎は振り返る。

ミルクボーイ(19年優勝)やマヂカルラブリー(20年優勝)の姿を見てきた2人は、M-1の魅力について「自分たちも必ず参加したい、という気持ちにさせてくれる」「真剣勝負だけど、お祭りのような楽しいイベント」と語る。

無欲のコンビがM-1頂上決戦で、どのような漫才を演じるのか。「初めての決勝なので、リラックスしているつもりでも、意外とガチガチに緊張するかも」と苦笑する兎。その芸名は「舞台で一番に跳ねる存在になれ」との願いから。

華麗なるジャンプを最高のステージで決めてくれ。

◆ロングコートダディ 堂前透(=どうまえ・とおる、90年1月16日、福井県おおい町生まれ)、兎(うさぎ、88年8月19日、岡山市生まれ)は、ともにNSC31期。09年4月結成。堂前は大喜利とイラストが得意。血液型A。兎は美容師の専門学校に通った経験を持ち、趣味は釣り、マージャン。血液型O。

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