映画やドラマに引っ張りだこの菅田将暉(28)が今、意外にも「区切り」の時期を迎えているという。フジテレビ系連続ドラマ「ミステリと言う勿れ(なかれ)」(月曜午後9時)で初の“月9”主演を飾り、放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも出演。歌手としてもドラマ主題歌を担当するなど、超多忙に見える今、このタイミングで一度足を止め、考える時間を作っている。【取材・三須佳夏】

少年のような屈託ない笑顔も見せる一方でシリアスな表情も魅せる菅田将暉(撮影・菅敏)
少年のような屈託ない笑顔も見せる一方でシリアスな表情も魅せる菅田将暉(撮影・菅敏)

★半年ぶり理髪

「半年ぶりに美容室に行って髪を切ったんです。スッキリしました。ずっと大河ドラマ用に伸ばしていたので、つき物が落ちたかのようにスッキリしました」

「ミステリ-」で演じている主人公・久能整のトレードマーク、爆発した天然パーマからは懸け離れた、ストレートのミディアムヘアで菅田は姿を現した。スッキリした身だしなみで椅子に腰掛け、11年放送「大切なことはすべて君が教えてくれた」で初めて“月9”に出演した時を回想した。

「オーディションだったので受かった時はうれしかったですし、オーディションをした部屋で、今回監督とかと打ち合わせをしたので『あ、そうだよな、ここだよな』みたいな感じとか、感慨深かったです」


「ミステリ-」では、淡々と見解を述べ、難事件を解決していく主人公。「全部はいまだにつかめていないんですよ」と話す。

「整君って物事への興味の持ち方がすごい。それに追随するうんちくだったり、いろんなことを知っていて、しゃべるじゃないですか。それをしゃべるためには自分がまずモノにしなきゃしゃべれないので、そこが大変でした」

会話劇でセリフ量は膨大。一定のトーンで話しつつ、説得力を生み出さなければならない。

「ただの説明セリフになっては駄目。でも感情を使いすぎても駄目。バランスが難しかったですね」


天然パーマは全て地毛で作り出した。セットや維持が大変だったという。

「ぐるぐると、とにかく巻いてもらいました。根元が伸びてくると、そのままへたってくる。2週間後のブロッコリーみたいになってくるので(笑い)。それを新鮮にするために1、2週間に1回ぐらいは美容室で根元を立たせてもらっていました。アフロとも違う。あの“くせ毛感”みたいなのが難しかったです」

★量も質も超越

15年にテレビ朝日系「民王」で遠藤憲一(60)とダブル主演を務めた22歳のころは、俳優業について「今はとにかく量です」と話していた。今は-。

「“とにかく量”っていう時期は過ぎて、“質を”っていう時期ももう1回過ぎて、今は何にも考えてない時期ですね」

昨年は主演映画「花束みたいな恋をした」「キャラクター」「キネマの神様」「CUBE 一度入ったら、最後」4作が公開されるなど、超多忙の中を走り抜けた。今は「ミステリ-」収録もほぼ終え、大河以外は落ち着いた状況だ。


「年末まで怒濤(どとう)に続けてきたので、そこから今1回、フラットにしようっていう。デビューしてから初めてなのかな。次の台本を読んでいないっていう状態がほんと久々なんです。1回、その状態を作るっていうのが今の段階ですね」

▼▼後編で語る結婚、子供「リアルになってくる」▼▼

★真っ白だけど

17年からパーソナリティーを務めてきた「菅田将暉のオールナイトニッポン」も3月で卒業する。深夜1時からの放送による体力的な理由も、率直に口にした。

「単純に疲労。物理的にセリフが入らなくなったり、朝起きれなくなったり。体に支障が出てきたので、1回止めようっていう感じです」

08年に芸能界入りして14年。一度、足を止め「休む時間が必要」と自ら判断した。


「無理に泣いたり笑ったりし続けると、どんどん神経の伝達が変になっていくというか。ずっと目に見えない骨折をしているような感じ。骨は折れているんだけど、目に見えないから『大丈夫だ』って、ついやっているけど、また違う作品で骨折して…それを繰り返して、感覚的に今、全身骨折しているみたいな感じなんです。『この状態ではいいものを作れないよな』。だから1回、休養しよう、というのが今なんです」

★3つの分岐点

仕事をセーブし、テレビや映画を見て笑い、おいしい物を食べてゆっくり過ごしている。

「かと言って『もうやりたくない』とか、そういうことじゃないんです。30代に入っていく中で、1回ゆっくり考えようかなって。まだ何も考えてないんで、真っ白なんですけど、とりあえず生きていけるように生活したいです」


2月で29歳。20代最後の年を前に、3つの分岐点があったと振り返る。

「19歳と25歳。と、去年ですね。19歳の時は『共喰い』、25歳の時は『あゝ、荒野』っていう作品。で、去年は1個区切りみたいのがありました。どこかで1回、区切りっていうか、句読点をつけないと、なんかバラバラしちゃうなっていう感じがあったので、丸じゃなくて、ちゃんと点を打つみたいなことを、ずっと望んでいたんです。そのタイミングが、たまたま昨年来たっていう感じですね」


「演じる側」だけでなく裏方にも目が向く。「ミステリ-」では初めて本打ち(台本の打ち合わせ)に参加した。

「めっちゃ楽しかったんです。でもめっちゃ大変だった。あと今回、この役誰がいいかなってキャストを選んで実現したんです。自分が選んだ人が現場にいるのを見たときは鳥肌が立ちました」

自ら衣装を仕立てるなど、趣味を兼ねた洋服でも、未来図がある。

「古着が好きなので、やるならそっちかな。買い付けして、それを卸す場所があって、っていうのは先の展望ですけどありますね」

★昨年11月結婚

9月に公開を控える映画「百花」(川村元気監督)では、社内結婚して子供が生まれようとしている日常の中、記憶を失っていく母を目の当たりにして、向き合う役。菅田も昨年11月、小松菜奈(25)と結婚した。家庭、家族をめぐる環境、心境にも変化があった。

「なんか子供を持っている役とか増えました。子供は好きですね。この間の大河(ドラマ)しんどかったんですよ。兄弟同士で殺しあったりとか、親が子に手をかけるみたいな。今までそこに、こんなしんどい思いはなかったんですけど、なんかちょっとリアルになってくるなって」

子供、の話題も続けた。

「今は子供いないのであれですけど、将来の設計として、おじいちゃん、おばあちゃんに会ったりするとそんな話にもなるんで。やっぱりちょっと感覚が広がっていきますね」

★腰据える1年

絶頂期の中、自ら見極めた「区切り」で迎えた22年は、あくまで前向きに“現状維持”を目指す。

「上ばっかり見すぎて首が疲れた、みたいな感じが今。もっともっと上の世界があるんだけれども、別に上ばかり見ていてもしゃあないなっていうのが最近のマインド。新しいことが増えすぎたので1回、ちょっと腰を据える感じの1年にしたいですね」


▼「ミステリと言う勿れ」草ケ谷大輔プロデューサー(37)

菅田さんは素晴らしいお芝居を見せてくれています。表現力もさることながら、整君の言葉をせりふとしてしゃべるのに工夫を重ねている。いろいろなパターンから最適なものを選んでの組み立て方、言葉の伝え方に頭の良さを感じます。原作の田村由美先生も言ってるように、整君は変人じゃなく、ただの大学生です。漫画では表情が動かないものを、映像に落とし込んでくれました。人間味も体温も、繊細なさじ加減で作り上げてくれる日本で唯一無二の存在だと思います。


◆菅田将暉(すだ・まさき)

1993年(平5)2月21日、大阪府生まれ。08年「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」ファイナリストに選出され、芸能界入り。09年テレビ朝日系「仮面ライダーW」で俳優デビュー。17年「あゝ、荒野 前篇」などで、日刊スポーツ映画大賞主演男優賞。17年にソロ歌手デビューし、19年「まちがいさがし」でNHK紅白歌合戦に初出場。176センチ。血液型A。


◆ミステリと言う勿れ

菅田演じる巨大天然パーマの大学生、久能整が、さまざまな事件を淡々と自身の見解を述べるだけで解決する。田村由美氏の同名原作漫画は16年から「月刊フラワーズ」(小学館)に連載され、単行本は累計1300万部超。