名物ディレクター誕生の予感だ。10月スタートのTBS系深夜バラエティー「不夜城はなぜ回る」(月曜深夜11時56分)の企画、立案者で番組にも出演する大前プジョルジョ健太ディレクター(27)。深夜にこうこうと光る真夜中に明かりがついている建物(不夜城)に突入し、何が行われているのかを体当たり調査する番組。22年3月から3度の特番を経て、今秋レギュラー化した。大人な世界をにおわせるタイトルをいい意味で裏切り続けるヒューマンドラマに毎度心が温まる。

入社5年目の気鋭ディレクターがこのほど、取材に応じ、番組の魅力、テレビマンとしての思いを語った。【佐藤成】(全3回の最終回) 

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番組作りの上で、マイルールがある。「『OKテイク』という言葉を使わないこと」。「OKテイク」とは、撮れ高が十分であるという意味だという。

「できるだけありのままにしたいなという。感じてもらえるようにしようと思っているんですけど、なかなか難しいですね。なので『OKテイク』とかっていう言葉を使わないようにしています。例えば取材している時に、『OKかな』って思うときあるじゃないですか、撮れ高っていう意味で。『これでOK』というのは決めていないです。なので時間がある限り、向こうの条件もあると思うのであれですけど、基本カメラをずっとREC(録画)を回しっぱなしですね。尻がないです。尻は帰りの飛行機の時間とか、次の仕事に間に合うまでにしてます。あとは向こうの人の寝る時間とか都合なので『まだいんの?』ってよく言われます。『もう十分撮れたでしょ』っていう。でも十分撮れたという感覚がない。考えがないというか、作ってないんです」。

つまりロケの「撮れ高」は未知数。番組では密着VTRは2本構成が基本だが、番組の都合上、現在はVTRの尺は33分以内と決まっている。その中で、ぜいたくな悩みもあるという。

「もうこれ1本でいこうっていうときもありますし、両方いいV(TR)があったとして、じっくり見たいV(TR)ってあるじゃないすか、25ぐらい。そしたらもう片方は7分ぐらいじゃけいけない。そうしたらもったいないじゃないですか。そしたらもう33分を無理やり伸ばすのか、どっちもキュッとするのか。何かそのバランスがすごくいつもみんなで考えてるんです」と番組作りの裏側を明かした。

とはいえ密着ロケにかけるカロリーは高く、レギュラー化が決まった際には毎週高クオリティーの番組を放送できるのか、不安もあったという。「でもレギュラーをやってよかったです。気づくこと、見えるものが全然違うなと。毎週やる上で大事なのはチームの運営。任せなきゃいけないことが多いじゃないですか。あとは年次は一番下ですけど決めなきゃいけないことが山のように出てくる。先輩の力を借りて、チームで作ることの難しさと楽しさを5年目でやらせてもらえているのはありがたいこと」。

とはいえ、やりがいと忙しさは表裏一体だ。「ストックがなくなってしまったんです(笑い)。次の収録何撮るか決めていないです。ロケにいっても時間の制約で5分しか取材させてくれないかもしれない。みんなスタッフはヒヤヒヤしています」。

自身は意外にも楽観的だ。「(自分も)不安なんですけど、いってみないとわからないから」。テレビ局は半年に一回、改編期が訪れる。新たに始まる番組があれば、すぐに打ち切りになる番組もある。「ひょうひょうというか、意外とあまりストレスをため込まないタイプなのかもしれないです。あまりプレッシャーを感じてないかもしれないです。終わるときは終わるだろうと」とどんと構えている。

自身が出演するスタイルについては「取材者なんでそうですね僕も基本は出たくないんです」と告白した。「僕をクローズアップするんだったら取材相手をクローズアップしたいけど、思ったのが、こっちのキャッチボールがない状態の言葉をだけを聞くよりもキャッチボールがある上でしか表現できないものってあるじゃないですか。そこを不夜城のチームでこういう形にするのが実はベストなんじゃないかと。取材してる上で関係性があるじゃない。そこを含めて何かその人というか、僕という人だからこういう一面が出るっていうのもその人の一面じゃないですか。それも含めてドキュメンタリーなのかなというふうに思ったので出るという選択をみんなで考えましたね」。

入社1年目で情報制作局に配属され、朝の情報番組についた。コロナ禍の20年に1年間報道局経済部を経験し、再び、朝の情報番組に戻ってきた。しかし「あさチャン!」が終了し、チームが解体。「ラヴィット!」(月~金曜午前8時)の立ち上げから携わり、「サンデー・ジャポン」(日曜午前9時54分)など情報番組とバラエティーの中間のようなポジションにいたところ、「不夜城-」が始動した。

最後に今後の目標を聞いた。「本当に報道とバラエティーの隙間を埋める番組を作り続けたいとは思っていますね」。報道番組というと、やや堅い印象を持たれがちだ。バラエティーというと、お笑い的な要素が強いイメージもある。「その間の隙間に入れるような番組って意外と少ないじゃないですか。報道も経験して、バラエティーやらせてもらえたので、隙間になるようなものを『不夜城-』は目指しているんです」。その口調は力強かった。(おわり)

◆大前プジョルジョ健太(おおまえ・ぷじょるじょ・けんた)1995年(平7)4月11日、大阪府大阪市生まれ。18年、法政大学社会学部社会学科卒業後、TBS入社。「あさチャン!」など朝の情報番組を1年間担当。報道局経済部に1年担当後、22年春まで「ラヴィット!」「サンデー・ジャポン」などの情報バラエティーを担当。

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