電話の盗聴など違法な情報収集があったとして英ミラー紙を発行するミラー・グループ・ニュースペーパーズ(MGN)を訴えている英国のヘンリー王子(38)が6日、ロンドンの高等法院に出廷して証言を行った。1991年から2011年にかけて違法な情報収集があったとしてMGNを提訴した王子が、王室の上級メンバーとしては132年ぶりに法廷に立つとあり、裁判所の前には大勢の報道陣が詰めかけた。米メディアによると、ダークのスーツ姿で裁判所に到着した王子は弁護士の出迎えを受け、集まった報道陣に「おはよう」と短くあいさつして足早に建物の中に入っていったという。

国王の息子で王位継承順位5位の王子が裁判で証言するのは異例のことで、全米メディアも大々的に報じている。

王子は50ページおよぶ陳述書を提出し、「携帯電話のボイスメッセージがハッキングされた」と主張。大衆紙には定期的に自身に関する記事が掲載されており、「誤報も見受けられるが、記事には真実の断片がちりばめられており、それらの情報源はおそらくボイスメッセージのハッキングや違法な情報収集によるものだと考えている」と証言した。また、自身の幼少期から大人になるまでの一挙手一投足をメディアは見てきたとも述べ、長年にわたって困難や精神的な苦痛を引き起こしたと非難。「友人や恋人、家族など自分の人間関係の全てにおいて第三者、つまり大衆紙の関与を感じる」と話し、「人間関係に多大な被害妄想を引き起こし、誰も信じられなくなった」「卑劣な行為」「負のスパイラル」などとメディアを批判した。

王子が帰国するのは、先月行われた父チャールズ国王の戴冠式に出席して以来1カ月ぶりとなるが、父と息子が対面する予定はないと伝えられている。4日に長女リリベットちゃんの2歳の誕生日を祝った王子は、その夜に自宅のある米カリフォルニア州からロンドンに向けて出発。娘の誕生日会を優先し、証言を予定していた5日の審理を欠席したことが話題になっていた。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)