漫画家の井上雄彦氏(56)が自らの原作を映画化し初めて監督を務めたアニメ映画「THE FIRST SLAM DUNK」が、石原裕次郎賞に輝いた。国内興行収入(興収)157億3000万円、中国や韓国など全世界興収は390億円に達する記録的ヒットとなり、井上監督は新人賞も受賞。石原裕次郎賞には300万円が贈られる。
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井上監督が、製作の中で追求した目標は「自分がバスケットからもらってきたものを、なるべくそのまま出す、表現する」ことだった。具体的には「バスケットらしさ。(選手同士が)バンッとぶつかる時の音、ボールの感触だったりも全て、そのまま呼び起こせるような映像を作れたら」という強い思いがあった。
18年夏からアニメーション製作に入った。湘北対山王をはじめ、試合のシーンは、人間の動作などをデジタル化するモーションキャプチャーを使用。「プレーヤーやバスケ監修をしてくれた人の意見を聞いて。彼(監修者)が現場のバスケの監督みたいに、いろいろな指示してくれた」。その中で「お互いにバスケ的にはこうだけど、もっとこう見せたいみたいなこともあったり」と試行錯誤した。ドリブルの音1つに「いつも聞いている感じから外れてはいけない」とこだわった結果、リアルの試合同然の生々しさ、迫力が生まれた。
最も苦悩したのが、コマ割りの大小で読者の目を留めるなどして表現していく漫画とは違い、映画はスクリーンの大きさが一定で、かつ映像が流れることだった。「漫画ではアップの顔の強さみたいなので表現することが結構、多いんですけど、映画ではパッと流れる」。そうした戸惑いを、描くことに立ち返り打破した。3DCGをキャプチャして、キャラクターの目の周りのラインを強くしたり2人の距離感まで描いて示した。「レタッチで描いて、ちょっとでも圧を上げる…そういう作業をしていった」。
そうした経験を通じ、描くことがうまくなったという。「人間の体や顔やしぐさの説得力ですかね。派手な何かが起きることも良いんですけど、ささいなことが、よりドラマになる。ほんの、ちょっとのことでも描けるようになる…そっち方向にうまくなったかな」
それが漫画の「SLAM DUNK」では「ほぼほぼ描いていない」という、小さな日常を積み重ねた宮城の家族のシーンに結実した。【村上幸将】
◆井上雄彦(いのうえ・たけひこ)1967年(昭42)1月12日、鹿児島県生まれ。88年に第35回手塚賞入選作「楓パープル」で漫画家デビュー。98年に「モーニング」(講談社)で「バガボンド」、99年には「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で車いすバスケットボールを題材にした「リアル」の連載を開始。06年に「スラムダンク奨学金」を創設。
◆「THE FIRST SLAM DUNK」 沖縄で生まれ育った湘北のポイントガード・宮城リョータは、地元で有名な選手だった3つ上の兄の背中を追うようにバスケにのめりこむ。高校2年生になり桜木、流川、赤木、三井たちとインターハイ王者、山王工業に挑もうとしていた。
▼石原裕次郎賞・選考経過 「監督って全体を見て俳優や声優区別なく、スタッフを見て作ると考えるのが裕次郎さん。今回は中国や海外でも人気になった」(河内利江子氏)。国内外でのヒットが認められ、第1回投票で「ゴジラ-1
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昨年「キングダム2 遥かなる大地へ」で石原裕次郎賞を受賞した佐藤信介監督(53) 何年に1度観られるかどうかの革新的な作品に、観客の誰もが驚かされ、原作のファンばかりでなく、昨今、映画というものにやや停滞感を感じていた映画ファンも、この作品によって覚醒しました。画、動き、音という映像の力の融合が、近年見たことのない新たなエンターテインメントの形で結実していました。絵を描き続けてこられた井上雄彦監督が、その実、動きと音を描き続けられていたことを改めて教えられました。日本から世界を変える興奮を生み出したこの作品は、同時に、この賞の理念に理想的な作品だったと思います。このたびは、受賞、本当におめでとうございます。
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昨年「PLAN 75」「冬薔薇」「ある男」「女子高生に殺されたい」で新人賞を受賞した河合優実(23) 井上雄彦さん、このたびはご受賞おめでとうございます。2000年生まれの私にとっても、中学のバスケ部時代、スラムダンクは必読書でした。世代を超えて愛され続ける作品を自ら監督されたこの映画が、また新たな形で日本中に熱をもたらしたこと、ほんとうに素晴らしいことだなと感じています。謹んで、お祝い申し上げます。
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コロナも落ち着き、上映を待っていた沢山の作品の中で、第36回石原裕次郎賞を受賞した、「THE FIRST SLAM DUNK」は、中国、韓国でも「スラダン」旋風を巻き起こしたそうです。監督の井上雄彦さんは新人賞も受賞されました。人気漫画とは言え、時を経てあえて映画化に臨んだ監督、関係者の方々の気概を、「諦めてはいけない」と言う信念を作品から十分に感じ取る事が出来た素晴らしい作品です。
最後になりましたが、受賞者の皆さまのさらなるご活躍、映画界のさらなる発展をお祈りいたします。
石原音楽出版社 取締役名誉会長 石原まき子



