女優大竹しのぶ(68)が、ミュージカル「GYPSY」(5月6~24日=東京・日本青年館ホール、6月に愛知、福岡、大阪で上演)に主演する。初演から3年ぶりの再演で、“究極のショービジネスマザー”という主人公ローズを演じる。役への思い、そして女優、母としての素顔に迫った。【小谷野俊哉】
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近年はミュージカルに精力的に出演している大竹だが、若い時には縁遠かった。
「20代の時に1回だけやって、あとは全然やっていませんでした。2007年(平19)に『スウィーニー・トッド』というミュージカルを市村正親さんとやって、その辺からです」
ミュージカルとは縁遠かったが、歌うこと自体は好きだった。
「たまにトーク&ライブみたいなのはしていたんですけどね。忌野清志郎さんのライブとかに、ちょこっとだけ出させてもらって。そこから音楽仲間みたいな人たちと一緒に、山崎まさよしさんとか清志郎さんのバンドの人たちとイベントに出たりしました。それがすっごいウケたんです。自分が楽しいことをやるっていうことで、お客さまがこんなに楽しいんだって思った」
泉谷しげる(77)に誘われて出演したイベントで、音楽の力を痛感した。
「宮崎のイベントなんですけど、最初に私が出て行った時に『なんだこの人、何歌うんだろう』って、いう空気になったんです。そんなに持ち歌もないし、何を歌うんだろうとか思って見ていた、おじいちゃんとかおばあちゃんが、私が歌うことによって、手拍子をして最後は叫んでくれていた。あ~音楽って、もう本当に、こんな一瞬でこんなに人を幸せにする力があるんだと思いました。芝居っていうのは2時間とか3時間、その役としてみんなの前に立つけど、音楽って生の私がイェ~って言ったら、お客さんもイェ~って応えてくれるんだなと。なんて楽しいんだろうと思うようになって、それからライブをちょっとやったりするようになりました。もう15年くらい前から」
デビューして50年以上。女優として歩んできた。
「辞めたいって思ったことはないですね。大変だった時は、それなりにはあると思いますけどね。離婚して、2人の子供を育てていくっていう時、ちっちゃい時はやっぱりちょっと大変でしたが、私の場合は母が一緒に暮らしてくれていたので。母と一緒に子育てをできたっていうのは、すごく大きいと思います」
生身の人間が出て、生身の人に見てもらう舞台。その本質は変わらない。
「いや、でも人が変わっているかもしれない。それは古いって言われるのかもしれないけど、例えばお稽古はもう最初から最後までみんながいるっていうのが、当たり前。それが基本だったんですけど、特にコロナがあってからは、その場に出ている人だけがいるっていうのも。自分の意見をあまり言わない若者とかもいて、見たければいればいいし、見たくなければいなくてもいい。当たり前のことをみんなしなくて、あっさりしていますね。なんかデコボコした感じがない。もっと面白い人間や、型破りな人間とか、めちゃくちゃな人がいないと。なんか面白いやつがいねえなみたいな感じはありますね。特に若い人とか」
人との交流を避け、当たり障りのない人間関係に物足りなさを感じている。
「こういうSNSの時代になって、人の目とか、自分の地位とか、守るっていうことが大事なのは分かるんですけど、なんか人と触れ合わなくても平気っていうか。あと、人に興味がないっていうか、なんかもう、スマホだけで楽しめるわけ。だから面白い話も、なかなかないですよね。ほんと、つまんないです。役者で同士でコンプライアンスなんてね。そしたら先輩のこうした方がいいというアドバイスもダメだと。パワハラになるって。そんなの関係ないよ」
人間関係が味気なくなる時代でも、大竹しのぶは舞台に立って、歌い踊り続ける。
「なんか本当に音楽が、めちゃくちゃワクワクするんですよ。だから、くたびれた人も、不幸な人も心躍りに来てほしいなって思います。もうほんとにこの音楽を聞いただけで、やってやるかっていう気持ちになるから。それはもうオープニングからお客さまを送り出す音楽まで素晴らしい舞台です」(終わり)
◆大竹(おおたけ)しのぶ 1957年(昭32)7月17日、東京都生まれ。74年フジテレビ「ボクは女学生」で女優デビュー。75年映画「青春の門 筑豊編」で本格デビュー。76年NHKテレビ小説「水色の時」。79年映画「あゝ野麦峠」。86年TBS「男女7人夏物語」。87年TBS「男女7人秋物語」。92年映画「死んでもいい」。82年にTBSディレクター服部晴治氏と結婚も87年西別。88年明石家さんまと再婚も、92年(平4)に離婚。158センチ。血液型A。
◆ミュージカル「GYPSY」 ローズ(大竹)は2人の娘、ルイーズ(田村芽実)、ジューン(富田鈴花)のステージママ。だが、才能のあるジューンが、駆け落ちしてしまう。ルイーズと再起を図るが、手違いでストリップ劇場の仕事を受けてしまう。
◆公演スケジュール
5月6~24日 東京・日本青年館ホール
6月5~7日 愛知・刈谷市総合文化センターアイリス大ホール
6月12~14日 福岡・キャナルシティ劇場
6月19~23日 大阪・森ノ宮ピロティホール



