今も弟子たちを見守っている。21日に亡くなった落語家立川談志さん(享年75)の最後の弟子、立川談吉(29)の二つ目昇進披露の会が今日27日に都内で行われる。10月初め、会のチラシを持って病室を訪問したとき、談志さんから祝福の言葉を筆談で伝えられた。「出てやる」。高座に出るのは無理な状態にあった談志さんの、最後の思いやりだった。

 談吉は今年2月、談志さんから「お前、考えてもいいぞ」と二つ目昇進のお墨付きをもらった。しかし、3月下旬に談志さんは気管切開手術を受け、声が出なくなった。体調も悪化した。身の回りの世話をする前座として、病状の経過を間近で見つめてきた談吉は悩んだ。「師匠がこんな時期に昇進披露の会をやっていいのか」。踏ん切りはつかなかった。

 しかし、一門のほかの弟子が二つ目昇進の会で奮闘する姿を見て決意した。「自分も、汗をかかなくては」。11月に昇進披露の会を行うことにした。10月初めに会のチラシを持って、病室を訪れた。談志さんは「出てやる。ギャラはいらない」と筆談で応じた。声は出ず、体も弱っていた。談志さんの生きる意欲の表れであり、弟子への思いやりだと感じた。「来られないことは、分かっていた。でも、そう思ってくれていることを知って、本当にうれしかった」。