<第15回日刊スポーツ・ドラマグランプリ受賞者発表>

 主演男優賞は、日本テレビ系「妖怪人間ベム」のKAT-TUN亀梨和也(26)が受賞した。愛犬が威嚇する際に見せる表情をまねるなど、アイドルの肩書を振り切った役作りを敢行。名作アニメの初実写化でプレッシャーがかかる中、原作ファンからのブーイングをエネルギーに変え、ドラマ版ベムを丁寧に作り上げた。

 「妖怪人間ベム」は、60年代に一世を風靡(ふうび)した人気アニメの初の実写化だった。ジャニーズの人気アイドルが、人間になれない悲しみを背負った妖怪人間を演じ切れるのか。原作ファンも多いだけに、疑問視する声は、亀梨にも届いていた。

 「『あり得ないよね』という声がエネルギーになりましたね」。

 監督やスタッフとの話し合いの結果、「近づけてもしょうがない。作り込もう」と決断した。

 徹底した役作りが始まった。「変身後ああいう(醜い)姿だから、とにかく美しくあれ」とすね毛、脇毛をそった。妖怪に変身する際、獣の雰囲気を出そうと、愛犬(ダックスフント)が眉間にしわを寄せて威嚇する表情をまねた。「意識して、振り切ってやりました」。アイドルの雰囲気を完全に消し去った。

 何時間もかかる手、腕だけのシーンでも代役を立てなかった。「たとえ自分の腕の一部だけでも自分の体でやりたかった」。たとえ顔が映らなくても、出演シーンはすべてこだわった。

 ドラマ同様にベラ役の杏、ベロ役の鈴木福とは固い絆で結ばれていた。休憩時間はいつも一緒。3人でセリフの練習はもちろん、福とはなぞなぞ、杏とは化粧品の情報交換をした。「本当に撮影が大変だったけど、みんなで支え合いながらやれた。みんなで台本を持って意見を言い合う、こんなアナログ感なドラマはないよね」。

 20~50代を中心に、幅広い年代層から認められての主演男優賞受賞。また、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北地方では、視聴率が軒並み高かった。「このタイミングで、当たり前の幸せ、人とのつながりというメッセージ性の強い作品に参加できてよかったなと思います。その上、賞をいただけてうれしいです。こういう色物というか、角度から伝えたことを受け入れてもらえたのかな」。

 “色物”への挑戦は俳優としての可能性を広げた。【近藤由美子】

 ◆亀梨和也(かめなし・かずや)本名同じ。1986年(昭61)2月23日、東京都生まれ。98年にジャニーズ事務所入り。01年にKAT-TUNを結成。99年TBS系「3年B組金八先生」に出演し、05年日本テレビ系「ごくせん」でブレーク。TBS系「ヤマトナデシコ七変化」で、第13回日刊スポーツ・ドラマグランプリ主演男優賞受賞。171センチ。血液型B。

 ◆妖怪人間ベム

 11年10月期に日本テレビ系で放送された作品。人間になりたい妖怪人間ベム、ベラ、ベロと人間の交流を描く。主演の亀梨がベム、ベラを杏、ベロを鈴木が演じた。共演は北村一輝、堀ちえみら。平均視聴率15・6%、最高は18・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 ◆ドラマグランプリ

 3月23日から30日まで日刊スポーツのホームページ「ニッカンスポーツ・コム(PC版、スマホ版)」と携帯サイト「ニッカン芸能!」、宅配読者の携帯会員サイト「ニッカンポイントクラブ」で、昨年4月から今年3月までに放送された連続ドラマを対象に、主演女優賞、主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞、作品賞を選ぶアンケートを実施。各期(4、7、10、1月)ごとのベスト5、各部門計20人(作品)を候補とした。投票総数は5856票。男女別では男性が1207票、女性が4649票、世代別では10代以下が391票、20代713票、30代986票、40代2138票、50代1309票、60代以上が319票だった。