川田騎手は迷わず外を選択した。内が伸びる先行有利な馬場。このトラックバイアスを考えて内めに進路を取る馬が多い中、4コーナーでリバティアイランドを馬群の一番外へ導く。そこには馬への絶大なる「信頼」があった。直線に向いた時は16番手。それでも届く。確信はなくても過去の経験値からビクトリーロードは見えていた。

向正面の桜をバックにレースを進めるリバティアイランド(左から5頭目)(撮影・白石智彦)
向正面の桜をバックにレースを進めるリバティアイランド(左から5頭目)(撮影・白石智彦)

スタートがひと息で、道中も進んでいかない。仕掛けてポジションを取りにいく乗り方もあるが、慌てず後方まで下げた。新潟の新馬戦で見せた豪脚は、上がり3ハロン31秒4。しまいはすべて10秒台のラップを、7番手から差し切って2着に3馬身差。この脚があるから、直線勝負に切り替えることができた。

当初のプランとは違っただろうが、うまくいかなければ次。大舞台で単勝1・6倍の人気を背負っても冷静でいられる。ここが川田騎手のすごさだ。いくら馬場がいいとはいえ、後方から内を突けば馬群をさばくリスクがある。特にダイナミックな走りをするリバティアイランドにとってはベストの選択ではない。

直線突き抜けて桜花賞を制したリバティアイランド(撮影・白石智彦)
直線突き抜けて桜花賞を制したリバティアイランド(撮影・白石智彦)

自慢の豪脚を引き出すため、その「準備」を怠らなかったのも勝因だ。隊列が縦長になっても動かない。弓矢の矢をいっぱいに引いた状態になるまで脚をためた。だから、放たれた時の爆発力が半端ではない。上がり32秒9での差し切りは、川田騎手の「信頼」と「準備」によってもたらされた。