第106回全国高校野球選手権(甲子園)は、京都国際の初優勝で23日に幕を閉じました。日刊スポーツ東北6県版では「書き切れなかった東北の夏 2024」と題し、記者が見た今夏の一幕を、全4回でお届けします。第1回は春夏通じて初の甲子園4強に輝いた青森山田。同リトルシニア時代に日本一に輝いた橋場公祐主将、桜田朔投手(ともに3年)のバッテリーと、チームを陰で支えた野球部のメンタルコーチ前田凌汰さん(29=和歌山県立医科大学げんき開発研究所)です。

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青森山田の選手たちは、よく「メンタルコーチの前田さんに…」と口にする。それだけセンバツ8強、今夏の4強に欠かせない存在だった。前田さんは昨年12月からチームに同行。選手らと朝食、夕食をともにし、彼らを知った。一緒に試合に勝ち切るための5カ条や全国制覇に向けた4つの継続目標、3つの挑戦目標を立てるなど支えてきた。

石橋(栃木)戦の前日には、4番原田純希(あつき)内野手(3年)に「『打ちたい』じゃなくて、後ろにつなげよう」と伝えた。初戦の長野日大戦では4打数無安打。「あくまで僕の感覚ですが、原田くんは静かに構えて、一瞬だけ見たことないバロメーターに行く」。一声かけただけに過ぎなかったが、原田は石橋戦の第1打席で大会唯一の中堅への2点本塁打を放った。4番の1発のきっかけとなった。

「中央学院戦での彼らの表情が忘れられない」。前田さんにとっても悔しかった3月28日から144日、滋賀学園に1-0で勝利し、8強の壁を超えた。準決勝で京都国際に敗れたが、選手たちにはどこかやり切ったような表情も見えた。宿舎ではナインに向けて「君たちに関われて幸せでした」。歴史を塗り替えてきたチームとともに1つの区切りをつけた。【浜本神威】

◆前田凌汰(まえだ・りょうた)1994年(平6)11月25日生まれ。大体大大学院修了後、青森県スポーツ科学センターに勤め、現在は和歌山県立医科大学げんき開発研究所に在籍。19年からバドミントン男子シングルスのパリ五輪日本代表・奈良岡功大(23=NTT東日本)、青森県立浪岡高校バドミントン部のサポートを行うなど、これまで小学生から社会人まで競技レベルを問わず、36種目85チームに携わった。

◆和歌山県立医科大学げんき開発研究所 和歌山市本町にあるスポーツの医科学支援を行う研究施設。トレーニングサポートに限らず、バイオメカニクスや心理サポートなど分野を超えて、選手、パラアスリート、県民への支援を行っている。