「下克上」の幕開けや! 「日本生命セ・パ交流戦」が開幕し、阪神がパ首位の楽天との投手戦を制し、白星発進した。大山悠輔内野手(27)が6回に左翼フェンスに激突しながら、飛球を好捕。6回には先発田中将から中前に決勝タイムリーを放った。大山の攻守にわたる活躍で昨年から続く交流戦の連勝を球団最長の「7」に伸ばした。最下位の猛虎がここから逆襲に打って出る。

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大山がほえた。二塁ベース上、右手でバシッと太ももをたたいた。楽天田中将は表情をゆがませた。ホームベース付近で帽子を太ももにぶつけた。誰の目にも勝負の分かれ目だった。

「なんとしても点を取りたい展開だった。必死で食らいつきました」

0-0で迎えた6回裏2死二塁、2ボール2ストライク。外角スライダーを丁寧にセンターへ運んだ。二塁走者の中野がヘッドスライディングで生還。自身も送球間に二塁を陥れると、珍しく感情を爆発させた。

直前の6回表2死一塁、浜風吹き荒れる左翼でビッグプレーを決めていた。7番渡辺佳のポール際に伸びる大飛球を、フェンスに激突しながらジャンプキャッチ。尻もちをつきながらボールを離さなかった。

「試合が始まって『怖いです』って言う人はいない。あれを捕るか捕らないかでは天と地との差。つかんだら離さないという気持ちで飛び込みました。いいプレーが出たので、勢いのまま(打席に)行きました」

本職ではないポジションで練習の成果が実り、決勝打にまで結びついた。目尻が緩むのも当然だった。

今年は2月の沖縄キャンプ中から佐藤輝との4番争いが注目された。特打は同組。ともに三塁ノックを受ければ、シャッター音が響き渡った。

「やばいです。怖いです。大変です。4番争い4番争いって、めちゃくちゃ言われますもん…」

苦笑いで本音をこぼした時期もあった。

球界屈指の長距離砲と比較され続ける毎日。時にはあえて背番号8のフルスイングを視界から外した。

「テルは僕らから見ても、飛距離だったり本当にすごい。正直うらやましいですよ。映えますから。でも、飛距離では勝てない。張り合ったら絶対にフォームを崩してしまう。それだけは嫌だったので」

映えなくてもいい。走攻守で泥臭く勝利に導ければいい。懸命にリーダー像を貫き続けるから、何より勝利に破顔できる。

9年ぶりに甲子園に降り立った田中将に、聖地では15年ぶりの土をつけた。25打点はいつのまにか虎単独最多となっている。

「何対何であろうと、最後に1点でも多く取っていればいい。しっかりみんなで勝ち取ろうと思います」

背番号3が先頭に立つと、虎は落ち着いて映る。【佐井陽介】

▼阪神が勝ち、昨季から交流戦7連勝。シーズンをまたいでの記録だが、08年の6連勝を抜き球団最長となった。交流戦の連勝記録は07年日本ハムの12連勝。シーズンをまたいだ記録には、06~07年の日本ハム13連勝がある。

▼交流戦に勝ち越したのは過去16年で7度(20年は開催なし)。初戦に勝ったのは6度あり、そのうち4度は交流戦に勝ち越している。今季も初戦勝ちの勢いに乗って、2年連続勝ち越しにつなげられるか?

○…近本が楽天田中将に強烈な先制パンチを浴びせた。1回、先頭で初球の146キロを強振し、左中間フェンス直撃の二塁打。得点にならなかったが、快打で出ばなをくじいた。8回も代わったばかりの鈴木翔の初球を急襲し、捕手前にセーフティーバントを決めて内野安打で出塁した。5月中旬からの今季ワーストとなる19打席無安打から脱すると、3試合連続マルチ安打で息を吹き返した。

○…先発マスクの坂本が好リードで無失点リレーを引っ張った。「風がちょっと強かったのでそこも考えながらの配球になった」と右翼から左翼方向に強く吹く浜風を考慮。「ピッチャーがその通り投げてくれるっていうのが一番こういうゲームになった要因かなと思います」と投手陣をたたえた。チームは22日巨人戦に続き、2試合連続の完封勝利となった。

○…島田が鉄壁の守備で勝利に貢献した。右翼守備に就いた7回。1点リードの2死二、三塁で浅村のライナー性の打球にチャージ。最後はスライディング捕球で、守備固めの役割を果たした。「チームを救うプレーになって自信にもなりました」と振り返った。矢野監督も「島田も攻めてくれたおかげで捕れた。島田だからこそ捕れたプレー」とたたえた。

▽阪神湯浅(8回に登板して1イニングをピシャリ。リーグ2位の13ホールド)「いつもと変わらず、ゼロで抑える強い気持ちを持ってマウンドに上がりました。西さん、ナベさん(渡辺)、アルカンタラとゼロでつないできたいい流れに乗って、自分もザキさん(岩崎)にゼロでつなぐことができてよかったです」

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