これが甲子園の力や! 経験豊富な阪神原口文仁内野手(32)が武者震いしていた。押せ押せの7回。2点を返して1点差に詰め寄った。なおも1死満塁で「代打・原口」のアナウンス。地鳴りのような歓声に甲子園が揺れた。
「いやあ…本当に、去年、優勝したときくらいの大歓声だったので、よみがえりました。いいイメージが湧きました。やっぱり、ちょっと甲子園の大歓声はすごいなあと思って」
大音量のチャンステーマに乗って、左腕森浦の149キロをたたき、三遊間を鋭く抜いた。同点だ。スタンディングオベーション。感激を抑えながら軽くこぶしを握った。9月14日、あの優勝から1年。「僕も大歓声でピンと来た」。逆転Vへの願いが、ベテランのバットも動かした。
実は8月25日以来、14試合ぶりの打席だった。同じ右打ちの渡辺の調子が良く、展開的にも出番が回ってこなかった。調整は難しかったというが「自分のチェックポイントはあるので」と黙々とルーティンをこなし、出番を待った。
前日13日に、高卒同期の秋山が引退発表。苦しい時代に支え合った特別な存在だ。「若いころ、首脳陣の方にいい意味で厳しく教育してもらって、キツい練習も乗り越えて、地道に体を作ってきた。だから今がある」。鳴尾浜で流した汗と涙は共通の思い出。盟友の決断を受け、原口も活躍の思いを新たにしている。
昨年とはひと味違う感激があった9・14。「まだチャンスはある。本当にいい流れで最終盤に入っているので。みんな目の前の試合に勝つことに集中している。変なプレッシャーもなく、自分たちの野球ができているんじゃないかな」。背番号94が真価を示す瞬間が、今から何度もやってくる。【柏原誠】



