歌舞伎名門の当主、半二郎が、地元を仕切る大親分の宴に招かれた。半二郎は座興で女形を披露した美少年に目を奪われる。親分の1人息子喜久男だった。
間をおかず、その場に殴り込みがあり、喜久男の目の前で父が斬り殺される。
序盤から畳みかける李相日監督は、カンヌ最高賞を得たS・エル・ファニをカメラマンに招き、異国風味のフィルターが血のにおいを和らげる。斬殺シーンは歌舞伎の舞に見える。
時を経て、半二郎に引き取られた喜久男は、跡継ぎとして生まれた同い年の実子俊介とともに芸に身をささげていく。演じるのは吉沢亮と横浜流星。これ以上ない2人が、才能と世襲のせめぎ合いを時に美しく、時にドロドロと紡ぎだす。
吉田修一氏が3年間歌舞伎の黒衣をまとって見つめた末に書いた原作は、ヤクザの家に生まれた男が人間国宝になるまでの50年を描いている。4代目中村鴈治郎が指導、寺島しのぶがおかみ役でキーマンを務めて伝統の重さを裏打ちする。
吉沢と横浜は、美しさに比例して苦しさが増すと言われる女形の動作を体現。鍛錬を想像させる。化粧の音も拾い、舞台裏の緊張もていねいに描かれている。【相原斎】
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