夏の甲子園大会の開催中止が決まった。一夜明けた21日、サッカーの冬の風物詩である高校選手権の常連校、前橋育英(群馬)の山田耕介監督(61)、矢板中央(栃木)の高橋健二監督(51)、青森山田の黒田剛監督(49)が電話で取材に応じた。同じ高校生アスリートである球児の集大成の場が失われたことへの思いや高校サッカーの今について語った。

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競技は違えど、日本一を目指す思いは変わらない。サッカーで教え子を全国制覇に導こうとする指導者ですら、高校球児の気持ちは察するに余りあった。前橋育英は野球もサッカーも全国区。校長も務める山田監督は「夢の甲子園ですから。大人が何を言っても、『そう言ったって先生、俺たちの気持ちが分かるのかよ』となりますよね」と心を痛めた。

前橋育英は5月末まですべての運動部が活動を停止中。6月から分散登校が始まるが、2週間は基本的に部活動も自粛になる。サッカー部はここまで、オンライン会議ソフト「Zoom」を使って体幹トレーニングを行うなどしてきた。指導歴38年目にして起きた経験のない事態に「とにかく、選手権が開催できると信じてやるしかない」と前を向く。

サッカーも、高校総体の中止によって全国大会が1つなくなっている。春夏と2つ夢舞台を失った高校野球について、矢板中央の高橋監督は「春のセンバツが中止になったときは『まだ夏がある』と思えたかもしれないが…」と言葉を詰まらせた。

矢板中央は2月下旬から休校が続いているが、6月から通常登校となる。部活動も再開する予定だ。ただ、「日常」がすぐに戻るわけではない。高橋監督は「練習試合や遠征、参加していた大会などがすべて白紙になっている」と、強化の見通しが立たなくなっている現状を説明した。最終目標である高校選手権に向け、実戦を取り入れることは選手のモチベーションを高めていた。「選手の気持ちを落とさないように、新しい形で練習メニューも組んで進めたい」と対応に頭を悩ませている。

青森山田を率いる黒田監督は、前回の高校選手権でチームを準優勝に導いた。優勝も2回。中高一貫校で、選手によっては中学1年から6年間の集大成として、高校選手権でのメンバー入りにかける姿を見てきた。同じように甲子園を目指した球児を思うとやるせなさが募る。「感染拡大は絶対にあってはならず、収束に向かうという大前提の中で、大人が工夫して考えることはやるべき。高校で野球をやめる子もいると思う。選手に寄り添って、1日も早く行動してあげるしかない」。現場で選手と向き合う立場から言葉を発した。【岡崎悠利】