フィンク前監督の退任発表から一夜明けた23日、ヴィッセル神戸の立花陽三社長(49)が次節26日北海道コンサドーレ札幌戦(ノエスタ)までの一両日中にも新監督決定を目指す意向を示した。交渉は最終段階と説明。候補に浮上し、質問で名が出た元日本代表監督ハビエル・アギーレ氏(61)については「具体的な名前はお話しできない」としながら、否定はしなかった。札幌戦までには時間的な余裕がなく、三浦淳寛スポーツダイレクター(SD)が代行指揮する可能性が高い。試合は元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(36)が今季初ゴールなど全4得点に絡み、勝利した。

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サガン鳥栖戦の約1時間半前、スタジアムの入り口に立花社長が姿を見せた。前日22日にフィンク前監督の退任を発表。家族の問題が理由だった。4年連続となるシーズン途中での監督交代に「クラブを代表して謝りたい」と頭を下げた上で「不測の事態は常に考えているので、ずっとリストアップし、話は進めております」。交渉中とした新監督について「今、最終段階に入っている。次の札幌(戦)までに報告できるように、準備している」と説明した。

候補に浮上している元日本代表監督アギーレ氏の名前が挙がると、冷静な口調で「サインするまで何があるか分からない。具体的な名前はお話しできない」と語るにとどめた。否定はせず、短期政権が続く現状に「クラブをしっかりと導いてくれる監督」と再出発を託す存在の理想を掲げた。

仮に新監督が決定した場合も、26日札幌戦まで数日しかない。外国人監督の就任には就労ビザなどの問題があり、新型コロナウイルスの影響も想定される。これらについて、立花社長は「コロナのことだけで選ぶ、選ばないという方向性はない」と語った。次節は三浦SDが代行指揮する可能性が高く、新監督が決まらない場合も、当面、三浦体制で戦うことになる。

アシスタントコーチのビベス氏が暫定的に指揮した鳥栖戦。難しい状況下でもチームの顔は動じなかった。1-1の前半20分、イニエスタは左サイドの難しい角度から、左足を振り抜いて今季初ゴール。19年8月23日鳥栖戦以来、1年1カ月ぶりとなる得点で、仲間を、チームを波に乗せた。

後半10分に左からのクロス、同23分には中央でのスルーパスでFW古橋の2得点を演出。ビベス・コーチから「そういったプレーができるからこそ、アンドレス・イニエスタ。それができるからこそ、世界のトップに立った。今回、ピッチで証明された」と賛辞を贈られた。勝利を決定づける4点目を確認し、世界的スターは両人さし指を頭上に掲げ、クルリと2周させた。公式戦9試合ぶりの勝ち点3。勝利に飢えていた。温かい拍手に包まれた神戸が、白星の味を思い出した。【松本航】