新型コロナウイルスの影響によるスポーツイベントの中止、順延の書面発表を連日見るようになった。その中で先日、目についたものがあった。
「なお、次年度(2021年度)は、2021年5月16日(日)【予定】に福知山大会を開催することを同時に決定させていただきました。1年以上先にはなりますが、皆さまと笑顔でお会いできるその時を楽しみに準備を進め…(略)」
競技名は「たんぼラグビー」。20年5月17日に京都・福知山市で予定されていた第6回大会は、中止となった。その発表と同時に、1年後の日程が示された。
それだけではない。6月21日を予定していた京都向島大会は「次年度の開催は令和3年6月20日(日)を予定しております。皆さまの大きな笑い声、最高の笑顔を、実行委員会一同、心よりお待ちしております」と発表。茨城・龍ケ崎大会、石川・小松大会、静岡の富士見・南畑大会など全国から中止の報告が相次ぐが、どれも主催者の前向きな気持ちが伝わってくる。
たんぼラグビーは、田植え前のたんぼでラグビーをする手作りのイベントだ。老若男女が泥だらけになり、楕円(だえん)球を追って楽しむ。大人が子どものようにはしゃげば、子どもが泥の力を借りて“番狂わせ”を度々起こす。発起人は長手信行さん(52)。「1人しかいませんが…」と笑う「たんぼラグビー実行委員会事務局」として、協力者と連絡を取り合っている。15年に京都・福知山市で初開催されると、その輪は全国に広がっていった。
新型コロナウイルスの暗い話題が続く4月12日、電話で話した長手さんの声はとても明るかった。
-たんぼラグビーの前向きさが伝わってきます
「この状況であれば、中止はしょうがないです。ただ『やらへんけど、何かできひんかな?』という気持ちではいます。いつも下を向いて歩くのではなく、何とかスポーツで明るくできないか…と思っています」
-1年後の日程が決まっているパターンが多い
「継続するのは大前提です。歴史が浅いですし。『当然、次はやるよ!』っていうのは、すごく大事。それぞれの場所で主催者の皆さんが、すごく前向きです。たんぼラグビーには農機のつながりで、トップリーグのクボタの選手がいつも参加してくださっている。クボタの方にも当然、中止の連絡をしたら『パワーをためて、爆発させましょう!』と言っていただいたんです。こちらとしては、1回途切れてしまう、怖さがありますよね。その言葉は本当にうれしかったです」
-さらに仕掛けがありそうですね
「トップリーグの選手たちがSNSで動画を発信されていて、僕たちはそれにすごくパワーをもらいます。まだ考えている段階ですが、例えばたんぼラグビーらしく、たんぼの前で一言発しながらパスをして、それを動画でつないだり…。今、話題の『(オンライン会議システム)ZOOM』で『たんぼラグビーサミット』とかも、できるかもしれませんね」
日常が失われた状況に関係なく、まもなく田植えが始まり、稲は秋に向けてすくすくと成長していく。その様子を眺めながら、1年後に聞こえる歓声を楽しみに待ちたい。【松本航】
◆松本航(まつもと・わたる)1991年(平3)3月17日、兵庫・宝塚市生まれ。武庫荘総合高、大体大ではラグビー部に所属。13年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社し、プロ野球阪神担当。15年11月からは西日本の五輪競技やラグビーが中心。18年平昌五輪ではフィギュアスケートとショートトラックを担当し、19年ラグビーW杯日本大会も取材。



