3度目の挑戦でも世界一は届かなかった。18年世界選手権銅メダルの永山竜樹(23=了徳寺大職)は3位決定戦で、2連覇中の高藤直寿(26=パーク24)を下し、2年連続で銅メダルを獲得した。

1年ぶりの「直接対決」となった。先に技ありを奪われ、残り2秒で隅返しから寝技につなげて勝負を決めた。最大のライバルの高藤に勝利した以上に、準決勝でジョージアの選手に敗れ、初の世界王者のチャンスを逃したダメージの方が大きかった。「今の実力がないから負けた。もっと、1回りも2回りも強くならないといけない」と、目を真っ赤にして振り返った。

「小さな巨人」だ。武器は、156センチの身長から放たれる圧倒的なパワー。小3から北海道の「玉置塾」で鍛錬した。腕立て伏せを3時間以上、石の詰まった約20キロの灯油タンクを両手に持って走るなどして肉体強化に励んだ。高校時代にはスクワットで重さ170キロを持ち上げた。小柄な体格を生かして相手の「懐に入ること」を強みとし、担ぎ技で豪快な一本を重ねた。東海大で指導した上水研一郎監督は「エネルギーの塊。まるで小さな巨人」と評した。

昨年9月の世界選手権準決勝で、高藤に負けたことが転機となった。父修さん(45)から「試合が面白くない。自分が楽しいと思う柔道をした方が良い」と助言を受けた。高校時代のように自身で猛練習を課して、自信を深めた。社会人となった4月以降は、1日3部練習で追い込んだ。「柔道が好きだからこそ練習量が一番の自信になる。24時間強くなることを考えているから楽しい」。20年東京五輪の代表争いが激化する中、今大会の結果で高藤との決着がついたわけではない。「強くなるだけ」。仮面ライダーに憧れた23歳の小さな巨人は、1年後の夢舞台に向け、さらに強さを増して“変身”を遂げる。