福岡県対決となった男子決勝は、福岡第一が75-68で福岡大大濠を破り、2年連続4度目の優勝を飾った。夏のインターハイに続き2冠を達成した。2年前の準決勝では3点差で逆転負けした因縁の相手。当時、1年生で出場していたポイントガード(PG)の河村勇輝主将(3年)は10得点、13リバウンド、11アシストと「トリプルダブル」の活躍でリベンジを果たし、連覇に貢献した。

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珍しい光景だった。試合終了のブザーが響く。福岡第一に喜びを爆発させた選手は誰ひとりいない。敗れて涙を流す福岡大大濠の選手たちと抱き合って、健闘をたたえ合った。「しのぎを削ってきた相手への感謝があった」と河村主将。同県のライバル関係だけではない。河村にとって、福岡大大濠はバスケット人生を変えてくれた、大きな存在でもあった。

2年前の大会。172センチの1年生PGだった河村は大会序盤から活躍し、注目を浴びた。日本一への切り札として準決勝の福岡大大濠戦に先発出場も、終盤に逆転され3点差で惜敗。自信を深めていたボールコントロールなどの技術は通用しなかった。「自分のスタイルが否定された。人生で1番の屈辱だった」。先輩たちに迷惑を掛けたとの気持ちも重なり、宿舎では号泣した。

自分を見失いそうな敗戦だったが、決してあきらめなかった。先輩たちからの励ましもあり「これから(福岡大)大濠には全部勝つ」と決意。ゴール下のインサイドだけでなく、外角からのシュートを増やすなど、プレーの幅を広げた。2年時は無敗。主将となった3年時は大学の強豪、日体大と同じ強化メニューを取り入れ、走り込んできた。今季8戦負けなしで迎えた決勝戦。身長で約20センチ上回る190センチ田辺に徹底マークされた中で、10得点、13リバウンド、11アシストの「トリプルダブル」を達成。2年前の敗北から全勝を守り、大舞台での借りも返した。

高校入学時は教員志望で「バスケをやっていくことは1ミリも考えていなかった」。それが、あの2年前の敗戦を糧にチームで勝ち進んだことはもちろん、年代別代表のU-16、18代表も経験。「バスケットでご飯を食べていきたい。日本代表PGになって世界と戦いたい」。小柄ながら日本代表PGを務めた田臥勇太、富樫勇樹に続く夢が、今は広がった。河村にとって、福岡大大濠に勝っての優勝は、日本一以上の価値があった。【田口潤】

○…同じ都道府県勢の決勝は東京勢同士の明大中野と京北が対戦した71年の第1回大会以来となった。今大会から出場チームが50から60に増加。今大会、強豪集う福岡県からは、インターハイ優勝の枠で福岡第一、県大会枠で福岡大大濠、春のブロック大会の枠で祐誠と3校が出場していた。この日の福岡県対決の決勝戦の注目度は高く、前売り段階でチケットは完売。会場は立ち見も含め約1万人の超満員で埋まった。