ブラサカ界に澤穂希がいた! 23日まで開催された視覚障害者らによる5人制サッカー、ブラインドサッカー日本選手権で、15歳の中学生で日本女子代表のFP菊島宙(そら)が、埼玉T.Wingsの得点源として準優勝に貢献した。決勝では恩師で日本男子代表の黒田智成(38)擁する、たまハッサーズ(東京)に0-1で惜敗したが、予選ラウンドから6試合で10得点を量産するなど大会を通じて圧倒的な存在感を示した。

●唯一の女子が日本選手権準Vに貢献

 決勝で唯一の女子、菊島が果敢に攻めた。小雨が降る中、男子選手の強い当たりに何度も転倒しながら、得意の大きく前へ蹴り出す縦のドリブルで相手を翻弄(ほんろう)。前半11分に黒田に先制点を許したが、後半18分、左CKから菊島がダイレクトシュートを放つと黒田のゴール以上に大歓声が上がった。

 試合後は「黒田先生に勝ちたかったけど、速さ、技術とまだ力の差があった。中学生相手に大人げないですよ」と笑った。決勝こそ無得点に終わり、優勝も逃したが、予選ラウンドから6試合で10得点。15歳の女の子とは思えない、圧倒的な存在感を示した。

 先天性の視力障害で視界は狭く、揺れる。教科書は文字を8倍に拡大したものを使っている。チーム監督の父充さんの影響で小2でサッカーを始めた。クラブチームで約6年間活動し、健常者とともに縦ドリブルや2、3歩踏み込んで放つキックの基礎を学んだ。

 小4でブラインドサッカーに出会った。黒田が勤務する東京・八王子盲学校に定期的に通い、指導を受ける機会を得た。アイマスクを着用しても接触の恐怖心などはなく「サッカーもブラサカも同じサッカーですよ」と平然と言う。現在は、ドリブルを生かすための左右のフェイントと、利き足でない左足の練習をしている。

 5月に日本女子代表で出場したオーストリアでの国際大会では、全4試合で6得点を挙げて得点王に輝き、日本を「初代世界女王」に導いた。菊島にボールを集めて攻撃する戦術だが、その役割を遂行したのは実力の証し。「世界でも自分のプレースタイルが通用すると思った」。

 現在、国内に女子選手は50人程度しかおらず、単独チームがないため男子チームに交ざって活動している。日本ブラインドサッカー協会は14年から女子練習会を開催するなど普及、育成をしているが認知度はまだ低い。パラリンピックや世界選手権の大舞台もないが、菊島はこう願う。「夢はパラリンピックで男子より先に金メダルを獲得したい。そうすれば黒田先生にも勝てるでしょ」。来春からは八王子盲学校に進学予定で黒田とは師弟関係になる。負けず嫌いの15歳にさらに火が付いた。【峯岸佑樹】

 <FP黒田>宙ちゃんのブラサカらしくないワンタッチでのボールさばきはまね出来ない。男子でも通用する技術がある。天才です。

 ◆菊島宙(きくしま・そら)2002年(平14)5月23日、東京都青梅市生まれ。小2でサッカー、小4でブラインドサッカーを始める。小6で埼玉T.Wingsに所属する。好きな選手は元なでしこジャパンの原菜摘子。好きな教科は体育と音楽。好きな食べ物はシュークリーム。趣味は長時間睡眠。153センチ。