今夏、来年の冬季パラリンピック開催地の平昌(ピョンチャン)を視察してきました。高原の小さな村という感じで、畑の中にぽつんぽつんと民家が点在していました。人口は5000人ほど。自然豊かで日本の野辺山(長野)にイメージが重なりました。野辺山には広大なキャベツ畑がありますが、平昌は白菜畑が広がっていました。

 平昌郊外には韓流ドラマ「冬のソナタ」のロケ地になったドラゴンバレー(龍平スキーリゾート)があり、周辺地域でもリゾート開発が進んでいます。選手村も大会後に再開発される予定で、すでに宿泊施設はマンションとして販売されています。この一帯が大会を契機に一大リゾート地として発展すれば、韓国でもウインタースポーツがいっそう盛んになると思います。

 日本選手が多数出場するアルペンスキーとスノーボードの会場は、選手村から車で50分もかかります。試合が2日以上続く選手には移動が大きな負担になります。会場の近くに前線基地を設けることも一考ですが、そうすると選手村近くに設営される日本選手をサポートするハイパフォーマンスセンターでの、日本食やトレーニング機材、お風呂の提供が受けられなくなる。悩ましいですね。

 18年の平昌冬季大会から20年東京夏季大会、22年北京冬季大会と、五輪・パラリンピックがアジアで3大会続きます。すでに中国は22年を見据えて内モンゴルなどの内陸部に多くのスキー場をつくり、選手強化に乗り出していると聞きます。寒い地域で長い期間滑ることができるので、欧州に代わる合宿地として日本でも少しずつ注目されるようになりました。

 開催国の韓国、中国の選手が強くなることは、日本には脅威ですが、冬季パラスポーツのアジア全体への普及を考えると、意義は小さくありません。現在、冬季パラ競技のアジア大会はありません。かつて夏季パラ競技のアジア大会「フェスピック」を日本が創設し、障がい者スポーツが広く発展したように、平昌と北京の連続開催が、アジアの冬季パラ競技発展への大きな転機になるのではとひそかに期待しています。(パラリンピック・アルペンスキー金メダリスト、日本パラリンピアンズ協会副会長)

 

 ◆大日方邦子(おびなた・くにこ)アルペンスキーでパラリンピック5大会連続出場し、10個のメダルを獲得(金2、銀3、銅5)。10年引退。現在日本パラリンピアンズ協会副会長で、来年の平昌パラリンピック日本選手団長。電通パブリックリレーションズ勤務。45歳。