リオデジャネイロ・パラリンピック9位の日本が、決勝で同6位のオーストラリアを逆転に次ぐ逆転の激戦の末、65-56で破って優勝を飾った。カナダ、ドイツを含めた総当たりの1次リーグから決勝まで4戦全勝。昨年の大会1次リーグで1点差負けしたオーストラリアにも連勝で雪辱し、8月の世界選手権(ドイツ)出場国による“前哨戦”を制した。

 試合終了のブザーが鳴る前から藤本怜央(34=宮城MAX)の両目はウルウルだった。コートに立っていたのではない。ベンチで優勝の瞬間を見届けた。第4Qの勝負どころで8得点をマークした香西宏昭(29=ランディル/NO EXCUSE)を出迎え、しっかりと抱き合うと涙をこらえられなかった。

 試合後のインタビューで藤本は言った。「もう10年以上も『日本代表のエース』と言われてきて、40分間試合に出続けるのが自分の仕事だと思っていたんですが…」。涙は消え、笑顔だった。悔しさを満足感が上回る。香西と2人で支え続けてきた代表が、確実に進化していると実感できた。

 鳥海連志(19=パラ神奈川SC)、古沢拓也(22=同)、川原凜(21=千葉ホークス)、岩井孝義(21=富山県WBC)。自分よりひと回り以上も年下の選手たちがしっかりと持ち味を発揮し、役割を果たした。12人のメンバー全員でつかみ取った優勝でもある。激しい守備と速い攻め。リオ以降、20年東京の金メダルを目標に掲げ、「スピード&クイックネス」をテーマに走力、フィジカル、メンタルを総合的に向上させてきたチームが、今大会で1つの答えを出した。

 「これからも若手を育てていくことに注力すると同時に、それに負けない自分をしっかり維持していきたい」。藤本の出場時間は20分余り。それでも香西、豊島英主将(29=宮城MAX)に並ぶチーム最多の14得点をマークした。高い決定力とリバウンドで第1Qのリードを生み、第3Qで逆転の流れをつくるなど、日本の大黒柱であることに変わりはない。

 「自分たちのバスケットで強い3カ国に勝てた。世界で戦えるという自信が持てた」。8月の世界選手権(ドイツ)でベスト4以上に食い込み、2年後の金メダルへ。12年ロンドン、16年リオの9位からホームの東京で頂点へ。日本のエースには栄光への道筋がはっきりと見えているようだった。【小堀泰男】