日本が河田悠希(24=エディオン)、古川高晴(36=近大職)、武藤弘樹(24=トヨタ自動車)の3人で臨んだ男子団体で銅メダルを獲得した。オランダとの3位決定戦でシュートオフの接戦を5-4で制した。最後は3人目の武藤が10点の的のど真ん中をを射抜き、同種目日本初の表彰台に上がった。韓国が決勝で台湾を下して2大会連続の金メダルを獲得した。

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ドラマのような幕切れだった。主役は武藤だ。3人が1発ずつ撃って合計を競うシュートオフ。2人ずつ終えて先攻のオランダが10点と9点。日本は2人が9点で1点ビハインド。オランダの3人目は9点。日本勝利の条件は、武藤が相手が撃った10点の穴より、さらに中心に近い場所を射抜くこと。つまり中心点。武藤の矢は、70メートル先のまさにその1点に突き刺さった。

土壇場でシュートオフに持ち込んだ1発も含めて最後は3連続の10点。MVP級の働きの主役は「自分がやってきたことを今ここで出すだけだと思って撃った」。1日300本で「よく撃った」と言われる競技で600本を撃ち続けた。19~20年の冬には「毎日1000本撃ちました」。それを神様が見ていたのかもしれない。そう思わせるような神業だった。

「(メダルは)重いが、心はぴょんぴょん跳ねている感じ。団体でメダルを取りたいとの思いがずっとあった」とは04年アテネ大会から5大会連続出場の36歳、古川の歓喜の弁。銅メダルは若手2人の成長の証しでもあった。初戦の準々決勝で米国を5-1で退け、連覇を達成した韓国との準決勝は、シュートオフにもつれる大接戦で前回王者を慌てさせた。

コロナ禍で大会が1年延期されたことで、選考レースも1年延びた。昨春の緊急事態宣言下で練習場も閉鎖され、大会は直前まで開催が危ぶまれた。それでも3人の緊張の糸は切れなかった。武藤は中学生の頃から愛読するサッカー元日本代表の長谷部誠の著書「心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣」を何度も読み返したという。

エース古川と24歳のホープ2人は代表決定後、合宿を繰り返して絆を強めた。「いいチームに恵まれた。たくさんの人に支えられて大会が開催され、たくさんの人に応援していただいてメダルが取れた。いろんな思いの詰まったメダルで重たい」。河田の感涙に3人の思いが凝縮されていた。

◆古川高晴(ふるかわ・たかはる)1984年(昭59)8月9日、青森市生まれ。青森東高-近大。高校時代に希望していた弓道部がないためアーチェリーを始め、3年時に国体で個人優勝。12年ロンドン五輪個人銀メダル。16年リオデジャネイロ五輪後、結婚。今年2月に妻との間に第1子を設けた。

◆武藤弘樹(むとう・ひろき) 1997年(平9)6月26日、愛知県あま市生まれ。東海中でアーチェリーを始め、14年南京ユース五輪で6位。18年ジャカルタ・アジア大会、19年世界選手権に出場。18年W杯第1、2戦で男子団体銀メダル。慶大-トヨタ自動車。175センチ、76キロ。

◆河田悠希(かわた・ゆうき) 1997年(平9)6月16日、広島県廿日市市生まれ。小学生でアーチェリーを始め、中3の国体で少年男子優勝。広島・佐伯高2年の14年に全日本選手権で最年少優勝。19年の全日本選手権で2度目の優勝。日体大-エディオン。178センチ、79キロ。