池田向希(23=旭化成)がトップと9秒差の1時間21分14秒で銀メダルを獲得した。

池田から14秒遅れでゴールした山西利和(25=愛知製鋼)も銅メダルで続いた。競歩では16年リオデジャネイロ五輪の50キロで銅メダルを獲得した荒井広宙に続いて2大会連続、この種目では日本初のメダル獲得となった。高橋英輝(富士通)は32位。マッシモ・スタノ(イタリア)が1時間21分5秒で初優勝した。

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2番目のゴールでも、笑みがこぼれた。両手を広げてフィニッシュした池田は、右手を握りしめてガッツポーズ。「メダルという結果を残せて、素直にうれしい」と喜んだ。

序盤から山西の後ろにつけ、集団の一角で力をためた。15キロを過ぎても余裕は十分。ラスト3キロでペースが上がり、7人だった先頭集団が3人となったときも、「いつでも行ける準備はしていた」。最後はスタノとの一騎打ちとなり、残り1キロ付近からじわじわ離されたが、銀メダルを獲得。日本のエース格とみられていた山西に先着し、「日本選手権、ドーハ(世界選手権)と負け続けていたが、その負けが今日につながった」と胸を張った。

競技会場は札幌に移ったが、ふたを開けてみれば気温30度以上、湿度70%を超えた。その蒸し暑さにもしっかりと対策。帽子の中に氷を入れ、手首には保冷剤を巻き付けた。レース直前の準備も万全で、アップ中は保冷剤で首を冷やし、さらには冷却ベストを装着。「アップ中は寒いぐらいだった」と笑った。

高校2年で長距離から競歩へと転向した時から、強豪・東洋大に入ることを志し、頼み込んでマネジャー兼務で入部した。「どんな条件だろうが、東洋大に行こうと決めていた」。受付待機や電話対応、朝練前の準備など、選手として練習に励みつつ、マネジャーとしての雑務もこなした苦労人だ。

駅伝の酒井俊幸監督の妻で、競歩コーチを務める瑞穂さんの指導を受け、自らの歩型を動画で毎日確認。50キロ代表の川野将虎とともに、切磋琢磨(せっさたくま)してきた。

血まみれになった古い靴が実家に保管されている。静岡・浜松日体高時代、5位となったインターハイの時に履いていたもの。予選でマメができてしまい、翌日の決勝では痛みをこらえながら完歩。負けたとはいえ、全力を尽くした証しだ。その古びた靴の隣に、銀メダルを獲得したこの日のシューズも並ぶことになるかもしれない。【奥岡幹浩】

<池田向希(いけだ・こうき)>

◆生まれ 1998年(平10)5月3日、静岡県浜松市生まれ。

◆出身校 浜松積志中-浜松日体高-東洋大。

◆主な戦績 19年世界陸上ドーハ大会6位。

◆自己ベスト 20キロ競歩は19年3月17日に全日本競歩能美大会でマークした1時間17分25秒。5キロ競歩は20年10月25日の順大競技会での18分20秒14。

◆練習 母校の東洋大を拠点にしている。

◆同期 東京五輪男子50キロ競歩代表の川野将虎とは東洋大、旭化成で同期。

◆はとこ タレント「みちょぱ」は父方のはとこ。「芸能人は影響力も大きいし、少しでも競歩を知ってもらえるきっかけになれば」と、親戚の知名度を活用した競技の認知度アップを目指している。

◆休日の過ごし方 アニメ「鬼滅の刃」を見る。原作漫画も全巻持っており、川野にも貸している。

◆好きな食べ物 焼き肉。

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