初出場の一山麻緒(24=ワコール)が2時間30分13秒で8位入賞を果たした。女子マラソン日本勢の入賞は04年アテネ五輪以来、4大会17年ぶりとなった。前夜になってスタート時刻が急きょ1時間早まった中でも、最後まで粘った。日本勢は鈴木亜由子(29=日本郵政グループ)19位、前田穂南(25=天満屋)は33位だった。ペレス・ジェプチルチルが2時間27分20秒で制し、世界記録保持者ブリジット・コスゲイ(ともにケニア)が16秒遅れの2位。3位はモリー・セイデル(米国)。

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フィニッシュ地点が近づくと一山はサングラスを外し、両手を広げてゴールした。33キロ付近まで先頭集団に食らいついた。後れを取ったあとも懸命に粘った。堂々の8位入賞に「この大会に向けて、これ以上頑張れないというところまでやってきた。8番だったけれど、今までやってきた成果が8番だったなと思った」。そう、すがすがしい表情で話した。父剛さん(55)も「最後までよく頑張った。後悔はないと思う」とねぎらった。

レース前日に突如発表された変更は、まさに寝耳に水だった。当初のスタート予定は午前7時。逆算し、午前2時に起床するため、レース2週間ほど前からは午後7時には就寝する生活を送っていた。レース前夜も同様の生活リズムで過ごして本番を迎えるはずだったが、眠りかけた時、突然部屋のドアがノックされた。関係者から「6時スタート聞いている?」と問われ「聞いてないです」とのやりとりがあった。

一山 それでちょっと目がさえてしまった。目はつぶっていたけれど、あまりこう、“がっつり”寝たというのではなく…。“朝寝”みたいな感じだった。

2度寝のような状態が続き、十分な睡眠は取れず、状態は必ずしも100%ではなかったかもしれない。しかし「条件はみんな同じ」。何より、長野県東御市で、所属のワコール永山監督が課す「鬼鬼(オニオニ)メニュー」と表現される厳し過ぎる練習をこなしてきた。さらに、母校の鹿児島・出水中央高の後輩たちから届いた「麻緒先輩、奇跡を起こして」という動画メッセージも励みに、気温が上昇してきた後も懸命に走った。初の五輪舞台で、日本選手17年ぶりの入賞を果たした。

一山 心の中では(永山)監督にメダルをあげたいという思いはあった。でも、自分が今日できる走りはできたと思う。

まだ24歳。札幌で得た経験を胸に、3年後のパリ五輪へ向け、さらに強くたくましくなり、走り続ける。【奥岡幹浩】