北海道鹿部町出身で、東京五輪の野球日本代表・伊藤大海投手(23=日本ハム)が7月31日、メキシコ戦(横浜)で五輪デビューした。6回から2番手で登板し、2イニングを1安打無失点。侍ジャパンの1次リーグ1位通過に貢献した。

2年前、ともに大学ジャパンで世界と戦い、同じ97年生まれとして「負けたくない気持ちがある」という先発の森下を、好救援した。過去に経験したことがないほどの、大舞台。「暑さも感じないくらいガチガチだった」と言いながらも、5-2の6回は3者凡退。7回は安打と四球で2死一、二塁とピンチを背負ったが、最後はスプリットで8番ペーニャを中飛に仕留め「納得するボールはあまりなかったけど、思い切って投げられた。独特な雰囲気はあったけど、その中で自分らしさは出せた」と、うなずいた。

日本ハム厚沢投手コーチは、伊藤について「ブルペンで投げて、そのまま試合で投げられる感性はダルビッシュ(パドレス)にそっくり」と言う。練習中のキャッチボールも「試合と同じ感覚でいたいから」と滑り止めを指につける。ブルペンでの投球をそのまま再現できる感性に加えて、常に最大限の準備を怠らない努力が、本番での強さにつながっている。

シーズン中の先発ではなくリリーフとして登板し、さらにはイニングまたぎも無難にこなした。求められる役割を器用にこなす侍の背番号16は「1球でも多くチームの力になれるよう、自分らしく思い切って腕を振りたい」。伊藤大海の五輪が、始まった。

◆伊藤と国際大会 苫小牧駒大(現北洋大)2年時に大学日本代表に初選出された18年日米大学選手権で先発、中継ぎとして4試合に登板した。同年のハーレムベースボールウイークでは中継ぎを中心に6試合に登板し、日本の優勝に貢献。19年の日米大学選手権では、森下(現広島)ら強力投手陣の一角として臨み、クローザーを任され5試合に登板。第1戦でセーブを挙げ、2勝2敗で迎えた最終戦では9回に登板し、打者3人で抑える投球を披露。日本を3大会ぶり19度目の優勝に導く原動力となった。

◆今季の伊藤 3月31日西武戦(札幌ドーム)でプロ初登板初先発し、6回1失点も引き分けで勝敗はつかず。このデビュー戦初回から4月21日ロッテ戦4回まで23イニング連続奪三振を記録し、球団の先輩である80年木田勇のプロ野球新人記録に並んだ。デビュー5戦目の同28日ソフトバンク戦(ペイペイドーム)でプロ初勝利を挙げると、5月28日中日戦からは6連勝。新人の6連勝は87年の西崎(10連勝)以来。前半戦はチーム最多の7勝、防御率はリーグ3位の2・42、奪三振率は両リーグトップの9・59をたたき出している。