侍ジャパンのエースが米国打線につかまった。田中将大投手(32)が2日、決勝トーナメント初戦の米国戦(横浜)に先発し、3回2/3、6安打3失点で降板した。2点リードの4回、2つの四死球が絡み3適時打を浴びて逆転を許した。WBC、プレミア12を含めた主要3大会は、通算12試合目の登板で未勝利。複数失点は初めてだった。降板後はベンチから仲間を鼓舞した。

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うなだれた。田中将がベンチに座り、白いタオルを頭にかけた。2点先制直後の4回。2四死球と2本の適時打で同点に追いつかれ、なおも2死一、二塁。9番アレンにフルカウントからの6球目、宝刀スプリットが真ん中へ浮いた。右翼線へ勝ち越し適時打を許した。ベンチの稲葉監督をグラウンドへ歩かせ、今季公式戦では1度もなかった途中降板を告げられた。

8年ぶりの日の丸。事あるごとに「北京」を口にした。「北京ではメダルに届かなかった悔しさしかない」。海を渡り、名門の金看板を7年間背負い78勝。昨オフ自身初のフリーエージェント権を取得し、将来を熟考した中に金メダルが浮かんだ。「日本球界に帰ってくれば(五輪に)出るチャンスがある。選ばれたなら断る理由なんてない」と心から望み、侍となった。

根底には野球界発展への願いがある。期待に応える、ではなく、超えることが信条。「野球の素晴らしさが伝わるようなプレーを見せたいといつも思っている。期待を超える魅力、楽しさ。そういったものを感じてもらえる選手でありたい」。球宴を新型コロナウイルスワクチンの副反応の影響で欠場後、侍ジャパンで巨人との強化試合に登板。試合後のセレモニーでスタンドのファンへ球宴欠場の分まで笑顔で手を振った。

日本中の期待を超えたい。右腕に魂を込めたが、米国打線につかまった。主要3大会で通算12試合に登板し勝利なし。複数失点は初めて。先発は13年WBC1次ラウンド・ブラジル戦のみで、この日は2戦目の先発マウンドだった。メンバー最年長の32歳。2死二、三塁をしのいだ2番手岩崎を出迎え、謝りながら尻をたたき、味方の奮闘を願った。【桑原幹久】

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