歓喜の輪の中心に、栗林良吏投手(25)がいた。2点リードの2死一塁、ロペスをカーブで打ち取り、二ゴロに。喜びを爆発させた右腕は、マウンド上に駆け寄った甲斐に体を持ち上げられた。次々と集まってきたナインとともに、健闘をたたえ合った。守護神として全5試合に登板し2勝3セーブ。大車輪の活躍で侍を金メダルに導いた。

「(9回で)本当にいいのかなと思っていたけど、結果で恩返しするしかないと思った。最後まで9回を任せてもらえてよかった」

最高の“サポーター”が右腕の支えとなっている。昨年7月に結婚した沙耶夫人(24)だ。名城大の同級生で、共通の知人を介して知り合い、大学1年から交際していた。「自分をしっかり持っていて、学生時代に負けて落ち込んでいる時も助けてもらってました」。2位縛りで臨んだ18年ドラフトでの指名漏れを経験。1度はプロの夢を諦め、トヨタ自動車で野球を続けることを選んだ時も、背中を押してもらった。

プロ入りが決定した直後は、沙耶夫人から「感謝の気持ちを持って野球をやりなさい」とエールを送られた。「生きるための原動力。奥さんがいるから1年でも長く野球がやりたい。結果を出して、楽にさせたい」。夫人はシーズンが始まるまでにアスリートフードマイスターの資格を取得し、栄養面でも最大限にバックアップしている。「『プロ野球選手になれてよかったね』って言ってもらえるように頑張りたい」。東京五輪での獅子奮迅の活躍が、何よりの恩返しだ。

栗林が最後を締めくくり、主要3大会の米国戦では、15戦目にして初の完封リレーを達成した。森下、千賀、伊藤、岩崎、栗林の5投手で強力打線を6安打ゼロ封。黄金ルーキーが、大舞台で最後まで輝きを放ち続けた。【古財稜明】