国際オリンピック委員会の(IOC)トーマス・バッハ会長が15日、東京都の小池百合子知事と都庁で面会した。

テレビの生中継が入り、大勢の報道陣がつめかける状況で、ハプニングは起きた。バッハ氏が冒頭、この日69歳の誕生日を迎えた小池氏に花束をプレゼントした。小池氏も笑顔で受け取り写真撮影に進んだが、報道陣の中から突然1人の男がバッハ氏に向けて「バッハ、お前はうそつきだ。空港は危険だ」などと英語で暴言を吐いた。すぐさま警備員や都の職員らに腕をつかまれ、強制退場させられた。男は過去にも小池氏の定例会見などで「水際対策がダメですよ。怠慢知事ではないですか」と、会見中に大声で訴えるなど、お騒がせの一面を持つ人物だ。

その後、バッハ氏と小池氏は男について触れることなく面会は滞りなく行われた。2人は8カ月ぶりの対面で、バッハ氏は1年の延期となった五輪について「オリンピックの歴史の中で最も長く延期し、最も規制や制限の多い大会になる」と述べた。その上で、開催目前となった今の心境として「東京都民の皆様、医療従事者やナースの方々など『名もなきヒーロー』のおかげです」と感謝した。

バッハ氏はプレーブック(大会関係者向け規則集)に基づいた、大会関係者の感染対策に触れ「私が聞いた限りでは選手8000人以上の検査が行われ、陽性となったのは3件だけ。3名と濃厚接触者は手順に従って管理されている」とし、「選手村の他の住民、あるいは日本の方たちに対するリスク0だといえる」と強調した。身近に五輪を感じる機会は少なくなったが「ぜひ東京の皆様にはアスリートを歓迎していることを示して欲しい。そして応援して欲しい」と話した。

ほとんどが無観客での開催となったが、小池氏は「観客は78億人です。アスリートのスポーツの力を信じている。新たなモデルとなることを確信している」と、まっすぐ前を見つめながら「関係者一丸となって、希望の明かりにしたい」と宣言。騒動から始まった会談だったが、きれいに締めくくられた。