東京五輪の競泳日本代表の国内高地トレーニング拠点となった「GMOアスリーツパーク湯の丸」(長野県東御市)が、24年パリ五輪に向けて常設化する方向であることが7月31日、分かった。コロナ禍で海外遠征が困難な中、標高約1750メートルの同地で最終調整。女子200メートルと400メートル個人メドレー2冠の大橋悠依(25=イトマン東進)にも原動力となった。19年10月に開設し、東京五輪までの「仮設」として運営してきたが、資金面などの問題も改善。五輪終了後に市議会での検証を経て、競泳強化拠点の1つとして「常設」が決定される見通しだ。

プロジェクトの中心を担った東御市の花岡利夫市長(70)にとっても、大橋のひと言が市民の理解を得る活力だった。日本代表が同地で初合宿を行った19年11月。「初対面だった彼女が『このプールを造ってくれてありがとうございます』って駆け寄ってきてくれたんです。喜んでくれるアスリートのために頑張らないとと思った。金メダルをとってくれたことは、ホッとしたし、安心した。私と萩野(公介)くん、瀬戸(大也)くんたちとのあいさつも『おかえり』『ただいま』なんですよ。湯の丸を出撃拠点に選んでくれた責任の重さも感じました」。市役所隣接の公民館には市民と喜びを共有するため、練習に訪れた全選手のサイン色紙や写真を飾った応援コーナーを設置。大橋の色紙下には金の花を2つ付けて祝った。

約13億円の建設費、運営維持費も年間約7000万円が見込まれていたため、反対の声も多かった。だが、試行錯誤を重ねながら、企業の寄付金だけでなく「ふるさと納税」で全国から支援を募った。返礼品は、地元産のシャインマスカット、チーズ、ワイン、牛肉、ビールなど。19、20年度合計で個人は2万6500件を超え、企業からは寄付を含めて110件超。維持費もスキー場運営と併設することで約3500万円に削減し、今後も市の一般財政負担はなくなった。

昨年4月にはJOC(日本オリンピック委員会)から水泳競技強化センターと認定された。東京から数時間の距離で利便性も抜群。準高地と低地を迅速に移動出来るメリットも大きい。「これからは湯の丸をどう生かしていくかが重要。科学的な根拠とトレーニングとの兼ね合いで世界と戦える。代表拠点のNTC(味の素ナショナルトレーニングセンター)は国際レベルだが、NTCの高地トレバージョンのような存在になれたら良い」と同市長はさらなる共闘に挑む。

水泳、陸上だけでなく、柔道、重量挙げなど他競技からも施設使用の要望もある。現在も陸上の中長距離選手やパラリンピック出場選手が合宿中。現地スタッフらに定期的なPCR検査を徹底するなどしてコロナ感染者を出さず、防止対策の実績も出来た。トビウオジャパンの“虎の穴”として「湯の丸からセンターポールに日の丸を!」を合言葉に本格稼働する。【鎌田直秀】