東京五輪で、チームから強制的に帰国させられそうになり保護された東欧ベラルーシ代表の陸上女子選手クリスツィナ・ツィマノウスカヤ(24)が2日、東京のポーランド大使館に入った。帰国すれば投獄の可能性があると訴えて亡命を希望。人道的査証(ビザ)を発給された。同大使館では同夜、マスク姿の本人も確認できた。近くポーランドに向かう見通し。

ツィマノウスカヤは7月30日に100メートル予選に出場し、2日の200メートル予選にも出場予定だった。欧州メディアなどによると、SNSで、一部選手に出場資格がないことが分かり、経験がない5日の1600メートルリレーへの出場を一方的に決められたとしてコーチを批判したところ、1日にコーチたちからすぐに帰国するよう指示され、同夜、羽田空港に連れてこられたという。空港ではイスタンブール行きのトルコ航空便への搭乗を拒否し、警察に保護を求めた。空港にいた組織委の職員もサポートした。

ツィマノウスカヤはロイター通信に「ベラルーシには帰らない」と話したという。別に公開した動画では、国際オリンピック委員会(IOC)に介入も求めた。地元メディアなどには「ベラルーシで投獄されるかもしれない」「帰国するのが怖い」などと話した。ベラルーシ当局は、精神状態に関する医師の判断に基づいた措置と説明している。

IOCのアダムス広報部長は会見で「彼女の決断を支援する」とし、ベラルーシ・オリンピック委員会には経緯の報告を求めた。

ベラルーシは、ルカシェンコ政権による欧州最後の独裁国家と非難されている。同国で不当な扱いを受けたスポーツ選手を支援する団体の関係者は、BBCに対し「彼女は家族への報復を恐れている」と話していたが、複数の欧州メディアによると、ツィマノウスカヤの夫は隣国のウクライナに出国したという。近く合流するとみられている。

 

○…ベラルーシは、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領(66)による強権的な支配が1994年以来続き、国際社会から最後の独裁者などと非難されている。6選を決めた昨夏の大統領選では多くの市民を拘束し、不正を訴えた抗議デモも徹底的に弾圧した。5月には同国領空を飛行中の航空機を緊急着陸させ、乗っていた反体制派ジャーナリストらを拘束した。同国オリンピック委員会の会長は、大統領の長男ビクトル氏。