男子100キロ級で初出場のウルフ・アロン(25=了徳寺大職)が、涙の金メダルを獲得した。決勝で趙グハム(韓国)に延長の末に一本勝ち。同級優勝は00年シドニー五輪金メダルの井上康生(現男子代表監督)以来、5大会ぶり。17年世界選手権、19年全日本選手権に加えて五輪も制覇し、日本柔道8人目となる「3冠王」となった。競技6日目を終えて、日本男子5つの金メダルは史上最多となった。

 

ウルフはユーモアある柔道家だ。米国出身の父ジェームスさんと日本人の母美香子さんを両親に持ち、自己紹介で「こんな顔していますが英語はしゃべれません」が“鉄板”のあいさつ。コロナ禍では料理に目覚め、刺し身やすしも握るほどの腕前になった。豊洲市場で40センチ以上のあじやぶりなどを購入して器用にさばく。「集中力は柔道と同じ。敵をさばいてる感じ」と、勝負への相乗効果になっているとの見解を持つ。

胸毛がトレードマーク。17年世界選手権直前に約15キロ減量した肉体美を披露する目的でバリカンで胸毛を刈って初優勝した。これを機に「毛がない=けがない」との験かつぎで、翌18年大会でもそったが5位に沈んだ。知人から「胸毛をそると生やすのに力が必要らしい」と聞いて、19年全日本選手権では体力温存の意味を込めそらずに臨んで優勝した。その後は公言通り、この日も胸毛全開で五輪王者になった。