清水希容(27=ミキハウル)は銀メダルとなった。最大のライバルとなるサンドラ・サンチェス(39=スペイン)との決勝。得意のチャタンヤラ・クーサンクーの演武で臨んだものの、27.88-28.06で、競り負けた。

頂点には手が届かなかったが、苦しい時期を乗り越え、銀メダルをつかみ取った。ここ数年はサンチェスと、金か銀を分け合うことが大半だった。しかし昨年1月のプレミアリーグ・パリ大会では太もも裏を痛めたこともあり、2年ぶりに決勝進出を逃した。

ショックな敗戦は続いた。コロナ禍により久々の試合となった12月の全日本選手権では、決勝でまさかの敗北。8連覇を逃し、「このままでは勝てない。自分のなかで、『負けてしまうのでは』という思いが強くある。そこを払拭(ふっしょく)しないといけない」。東京五輪が迫る中で、強い危機感をにじませた。日本代表の古川哲也コーチは、「気持ちの面で攻められなかった。負けられないという思いが強すぎて、体が萎縮してしまっていた」と分析した。

状況を打破すべく訪れた先は沖縄だった。今年2月から4カ月ほど、形男子で無敗を続ける喜友名らとともに練習に励んだ。「当初はまだ全日本選手権で敗れたことの悔しさや迷いがあった」という。それでも王者の隣で汗を流し、気迫を前面に出す練習を重ねることで、邪念を振り切った。「私にとって非常にプラスになった。五輪を迎えるまでに、喜友名先輩と練習できたことは良かった」。南の国で大きな収穫を得た。

再び自信を取り戻して臨んだ東京の晴れ舞台。迷いを振り切り、思い切り演武した。