混合10メートルエアライフル伏射に出場した渡辺裕介(46=渡辺石灰)は、45位(623・0点)で上位8人による決勝に進めなかった。

お笑いコンビ「アンガールズ」の田中卓志とは広島県上下町(現府中市)の上下中で同級生だ。実家は5軒隣だが「田舎なので1・5キロ離れています。卓ちゃんのほうが学校に近かったので、私が自転車で追い掛ける感じでした。すごくおとなしくて、背も小さかったので、テレビで見た時に誰だろうって感じだった」。大会前にもメールなどで連絡を取り合いエールももらった。「友達とか会社の得意先を含めて、とんでもない数の方から応援を受けて、幸せ。卓ちゃんには『あまり商用には使わないでね』と。ほとんどは出演依頼でした」と感謝しつつ、苦笑い。府中市で100年以上続く会社の4代目社長は、多くの支えに感謝した。

中高時代は軟式テニス部、立命館大ではアーチェリー部で全国大会出場経験もある。04年に機械に巻き込まれて右腕を失った。同年アテネ五輪の射撃競技を見ながら妻の勧めもあって、義手でのパラ射撃挑戦を決めた。全日本選手権3連覇の実力も、今年6月のW杯(ペルー)では出場権を獲得出来なかったが、先月10日に国際オリンピック委員会(IPC)から、急きょ追加で出場枠を与える通知が届いた。パリを目指して射撃姿勢を作り替えながら、東京五輪もテレビ観戦していた直後の吉報。準備期間は少なかったが、過去にないほどの練習を積んで臨んだが、「ここに立っていることが奇跡ですが、結果は率直にショック。パラ出場を目指していたので、こうなった。目標をもっと上げていかないと。すごく幸せな時間を過ごさせてもらったけれど、常にファイナルを狙わないと。一発逆転ホームランは、なかなかない」。5日にはライフル伏射が残っており「自称得意種目なので、根性見せて、全部ぶつけてやろうと思います」と決勝進出に挑む。【鎌田直秀】