女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」FW岩渕真奈(28=アーセナル)が初の金メダルへ先導者となる。20日、東京五輪1次リーグ初戦のカナダ戦(21日、札幌ドーム)に向けて、札幌市内で調整後に会場を視察。現在4戦連続得点中で、記録を伸ばせば澤穂希さんらを抜いて歴代トップとなる。12年ロンドン五輪銀メダルを知るのはDF熊谷紗希(30)と自身のみ。背番号10を担うエースが、2大会連続銅メダルの強敵に最前線で立ち向かう。

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10年越しの五輪が迫っても、岩渕の表情には余裕があった。午前10時からの最終調整。北の大地の日差しを浴び、強い風に短髪をなびかせながら、緊張感を楽しんだ。「今までの世界大会の中で一番コンディションがいい。楽しみですし、本当に全部をぶつけられる大会かな」。代表最長に並ぶ4戦連発の結果も背中を押し、充実感が漂った。

9年前、W杯優勝翌年のロンドン五輪は19歳で迎えた。決勝の米国戦。FW大儀見の得点も、2失点も記憶が定かではない。だが、忘れられない場面がある。

「自分のシーンだけは覚えています。左45度からの(GKとの)1対1。中途半端な高さで打っちゃった。『思い切り振れば良かったな』と思っちゃいます」

残り13分で途中出場。直後の好機、シュートはGKに阻まれた。1-2で敗れ、悔しさを胸にしまった。

「あれを決めたらチームは優勝できたかもしれない。金メダルが取れていたのかなと思ったら、悔しい」

16年リオデジャネイロ五輪は最終予選で敗退。欧州の地で己を磨き上げ、代表では背番号10を背負う。この日、ロンドンの記憶を掘り起こし「間違いなく、2012年より自信を持って臨めます」と言い切った。運命を背負う覚悟がある。

「ピッチに出ている11人だけでなく(登録)22人、スタッフを含めて全員で戦えば勝機がある。本当に大会が終わった後に、そうやって(金メダルに導いたと)胸を張って言えるように、頑張りたいと思います」

28歳になったエースが、歴史をつくる。【松本航】