サッカー女子の日本「なでしこジャパン」(FIFAランク10位)が、2大会ぶりの五輪初戦で勝ち点1をつかんだ。2大会連続銅メダルのカナダ(同8位)に1-1。前半6分、先制点を許したが、後半39分に背番号10のFW岩渕真奈(28=アーセナル)が起死回生の同点ゴールを決めた。澤穂希らを超える日本代表最長の5戦連発ゴールで弾みをつけ、24日の第2戦(札幌ドーム)は英国(同6位)と対戦する。同じE組の英国はチリに勝ち、G組の強豪米国はスウェーデンに0-3で敗れた。

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両拳を振り、ようやく岩渕の笑みがはじけた。日本が1点を追う後半39分。MF長谷川がボールを持つのを見て、DFライン裏へ走った。絶妙なパスを受けた右足で、ふわりと浮かせた同点ゴール。「スカウティングで『DF裏が弱いかも』という話があった。全員の気持ちが乗ったゴールだと思う」。真っ先に裏方を含めた仲間をねぎらった。

無観客で屋内の札幌ドーム。終盤は「(前へ)行こうよ」と励まし合った。前半6分、相手エースのシンクレアに先制点を献上。後半9分にはFW田中がPKを決められなかった。2学年下の後輩が得たPKで「蹴れば? 思い切ってね」と伝えた。だが、無念の失敗。その悪い流れも、尊敬する澤を超える代表最長の5戦連続得点で吹き飛ばした。試合後の会見では「PKのミスについて取り上げてもらいたくない。ポジティブにお願いしたいです」と後輩を思いやった。

5年前の大阪。リオデジャネイロ五輪最終予選で切符を逃した。11年W杯ドイツ大会で優勝、12年ロンドン五輪銀メダルを知る1人として、人気の低下を重く受け止めた。

「『寂しいな』という気持ちはあります。自分たちが招いた結果。『結果を出せば、またそうなれるのかな』と思って、そこに近づけるようにやるしかない」

当時はドイツのBミュンヘン所属。入団前は名前も知らなかった仲間に1対1で何度も止められた。パスが来ない時もあった。「自分なりに努力をし、認められる。それは日本にいたらなかった」。リオ五輪の金メダルはドイツだった。テレビで同僚の姿を見ると、悔しさがこみ上げた。「本当だったら、あそこにいたのに…」。唇をかみしめて、異国で成長を目指した。

5年前と違うのは、五輪のピッチに立っていることだ。「今日以上のプレーを2~3戦目でできるように、悔いのないよう全員で頑張りたい」。たくましいエースには、未来を明るく変える力がある。【松本航】

▽DF熊谷 立ち上がりの失点が試合を難しくした。初戦の難しさを感じた。勝ち点1を取れてよかった。

▽MF遠藤 勝ち点1だが、ポジティブにとらえたい。次は絶対に勝たないといけない。どのポジションで出ても、やることは変わらない。

▽MF塩越 ずっと楽しみにしていたピッチに立つことができた。緊張はしなかった。結果に一喜一憂せず、次の試合に臨みたい。

◆東京五輪女子サッカーの大会方式 12チームが3組に分かれて1次リーグを戦い、各組上位2チームと3位の成績上位2チームが準々決勝に進む。各組の順位は(1)勝ち点(2)得失点差(3)総得点の順で決め、それも並んだ場合は当該チーム間の勝ち点、同得失点差、同総得点、全試合の反則ポイント、抽選の順で決める。準々決勝からは90分で同点の場合、30分(前後半各15分)の延長戦を行い、それでも決着がつかない場合はPK戦を行う。

▽日本協会・田嶋幸三会長 強豪のカナダに対して勝ち点1を取れたことは非常に大きく1次リーグ突破につながるものだ。必ずしも調子がよかったわけではないように感じたが、よくない時にしっかりと勝ち点を取れるということはチームに力があるという証。