まずはお疲れさまでしたと言いたい。だけど、あと少しだっただけに、悔しいというところが本音です。帰ってきたら、普通の料理を振る舞ってあげたい、と思います。普通の日常に戻していきます。

五輪までは本当に長い道のりだった。延期もあって、選手は体の面でもメンタルでも負担になった1年だと思う。選手は五輪に出たいという思いを何十年もブラさずやっている。そして家族、サポーターの人も同じように人生をかけてバックアップしている。正直なところ、無観客開催が決まって残念だった。コロナになって、こんな状況でスポーツなんかやっている場合じゃない、という意見もある。生きていくのに精いっぱいの方々がいる。ただひとつ理解していただきたいのは、スポーツ選手も結果を出してこそ、競技に打ち込める、生活していける。それもスポーツの一面です。みんな生きるためにコロナ禍の中で戦っています。

私は11年世界選手権に日本代表として出場しました。でもやっぱり五輪は最高峰で、別格です。「魔物がいる」とも聞く。今はサポートする側ですが、大也も世界選手権と五輪はメンタルが全然違う。本当にすごく大きなプレッシャーの中で戦っていると思う。

大也には、金メダルよりも、自分の納得のいくレースをしてほしい。シンプルにそれだけを思っていました。ただ私のネイルは五輪カラーです。これで圧(あつ)をかけてます。口では「ベストを尽くして」といってますが、これで爪先から圧をかけてます。2カ月前からで今は第2弾。口と指で全然違うんですよ。大也にとって金メダルは幼稚園のころからの夢。それは競技としての目標で人生の目標ではないですが、ずっと金メダルをとりたい、というのは聞いてきた。

どんな五輪選手でも幼いころは誰かに憧れます。「あの選手、かっこいい。こんな選手になりたい」。憧れから夢を見始める。子どもたちに夢、目標を与えられる。それが五輪。本当に素晴らしい祭典です。今はマイナス部分ばかりが注目されています。チケット収入がない、海外観客がいない、経済効果が少ない。でも選手は経済を回すために競技をしているわけじゃない。お金じゃないと、皆に気付いてもらえたらいい。今回の五輪で原点に戻れるのではと期待しています。

大会期間中もコロナ禍で思いもしないアクシデントがあるでしょう。でも同じように、競技できっと想像もつかないようなドラマ、予期せぬメダル、見る人の心を震わせる感動的なシーンは出てくる。国を越えた共感で、世界をひとつにするスポーツの在り方を再確認したい。個人的には陸上の山県亮太選手、寺田明日香選手らに注目しています。山県選手がスタート前に見せる獲物を狙うような目はとても印象的です。五輪をやってよかったとポジティブに思ってもらえる大会になることを願っています。(元飛び込み日本代表)